【主張】敦賀原発と断層
福井県敦賀市にある日本原子力発電敦賀発電所2号機の原子炉建屋の下を走る断層が、再調査の対象になった。
経済産業省原子力安全・保安院が専門家を伴って実施した現地調査で、比較的新しい時代に動いた可能性があると判断されたためである。日本原電には、保安院の指示に従って速やかに地盤の再調査を実施してもらいたい。
結論が出るまで敦賀原発の運転は見込めない情勢だ。だが、同じ福井県内にある関西電力大飯原発3、4号機の再稼働問題に、この件を絡めてはならない。
大飯原発再稼働の検討は、地元おおい町で26日に行われる国の説明会などを経て粛々と進められるべきである。いたずらに議論を拡散させ、再稼働への判断を遅滞させる愚は避けたい。
そもそも、活断層とは、過去に繰り返し活動し、将来もずれ動く可能性のある断層だ。内陸部で断層が動くと直下地震が発生するので、調査に念を入れることには意味がある。
しかし、断層があるからといって、すぐに動くと考えるのは早計だ。海溝沿いで起きるプレート(岩板)境界型の地震が百数十年の周期で繰り返されるのに対し、活断層の活動は数千年から数万年に1度である。しかも、断層ではあっても数十万年前に活動を停止しているものもある。
だから原発の建設に際しては断層の有無や、存在する断層の活動履歴を調査する。過去12万~13万年以内に動いた断層があれば、再びずれ動く可能性があるとみなされ、国による許可は下りない。
今回求められた再調査では、以前から敦賀原発の敷地内での存在が知られていた断層が、これまでの日本原電の主張通り、活断層ではないことの証明が焦点だ。
日本列島は、地震の活動期に入っており、東日本大震災をもたらした巨大地震の影響で、さらに続発しやすくなっている。電力各社には地震への原発の防備を一段と強化してもらいたい。
同時に電力不足という、もう一つの危機の接近も国民が失念してはならない重大な案件である。基幹電力である原子力発電の長期停止は、日本社会を、根底からの崩壊に導く可能性をはらんでいる。大飯原発はその危機回避の分岐点だ。適切な判断に基づく再稼働の意味は極めて大きい。