北の暴挙に金融制裁復活を。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






【土・日曜日に書く】論説副委員長・高畑昭男

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120407/plc12040703160004-n1.htm





「人工衛星」と称する北朝鮮の長距離弾道ミサイルの発射予告期間が5日後に迫った。





 日本政府は、万一に備えて自衛隊法に基づく破壊措置命令を発令し、ミサイル防衛システムを通じて日本の領土・領域と国民の安全を守る態勢を進めている。

 とりわけ今回は、3月末に新設された日米の共同統合運用調整所が初めてミサイル防衛の指揮をとる。米軍と自衛隊の新たな連携の真価が問われるだけに、ぜひとも成功させてほしいものだ。

 だが、ミサイル発射を乗り切ったとしても、北の暴挙や脅威が何ら解消されるわけではない。日米韓など関係国は、北が3回目の核実験を強行する可能性も想定し、厳重な監視・包囲体制を緩めずに強化していくべきだろう。

 


≪3年周期の核実験≫

 


 その根拠は、過去2回のミサイルと核に関する北の行動パターンにある。金正日政権がテポドン2号など弾道ミサイル7発を連射したのは2006年7月だ。テポドン2は空中爆発して失敗に終わったが、3カ月後の10月に「核実験に成功した」と発表した。

 3年後の09年4月5日、オバマ米大統領の「核なき世界」演説にぶつけるように、テポドン2改良型とみられる長距離ミサイルを発射した。その50日後の5月25日には、これ見よがしに2回目の核実験を強行している。

 09年から3年目の今回のミサイルは、テポドン2改良型(約3千キロ飛行)の推進力を強化した再改良型とされ、「3段式で射程6千キロ以上」との見方もある。一方の核実験も、06年は「不完全燃焼」のために爆発規模「1キロトン未満」(米国防筋)とされたが、09年は「2~4キロトン」(米推定)~「最大20キロトン」(ロシア政府)と着実に規模を増大させている。

 


≪米国の直接的脅威へ≫

 


 ミサイルの長射程化と核弾頭の小型化に成功すれば、米国本土を直接脅かすことが可能な域に達するまであとわずかだ。

 ましてや、今年は昨年死亡した金正日総書記が金日成主席生誕100年(15日)に向けて建設を目指してきた「強盛大国」元年にあたる。後継の金正恩氏は11日にも総書記就任が見込まれるが、朝鮮労働党高級幹部によれば「金正恩大将は『(金正日)総書記の革命遺産の核をもっと活用しよう』と語っている」と伝えられる。

 国連安保理は06年のミサイル、核実験、09年の核再実験に際し、全会一致で3つの非難・制裁決議を採択したが、北はいずれも「決議を拒否する」とはねつけた。

 過去6年間、北が(1)3年周期でミサイル・核の軍事技術の進展を誇示してきた(2)国連決議や国際社会の勧告にも応じない-という周到な行動を重ねてきた事実を踏まえれば、ミサイル発射に続いて、金正恩新体制が核再々実験に踏み込まない保証はどこにもない。

 問題はミサイル発射から核実験へ進むのを阻止するために、日米韓がいかに対処するかだ。

 ブッシュ前米政権の末期、北は核無能力化に応じる「ふり」をしてテロ支援国家指定解除や経済援助をタダ取りした。この轍(てつ)を踏まぬように、オバマ政権は「核廃棄を自ら確約するまで制裁を続け、6カ国協議再開や米朝直接協議に応じない」(戦略的忍耐)を基本としてきたが、昨年以降、「人道的見地」から食糧支援を名目にした直接協議に着手した。

 だが、その結果が「国連安保理決議違反であると北も了解していたはず」(米国務省)のミサイル発射予告である。「核やミサイル活動の一時停止」という約束も踏みにじられる形勢となった。

 ここに至っては、食糧支援停止といった次元では済むまい。北の暴挙を断固封じる包括的措置が必要だ。野田佳彦政権は3日、日本独自の対北制裁の1年延長などを決めたが、日米の個別制裁や国連制裁だけでは限界がある。

 オバマ政権は、核兵器開発を進めるイランに対する独自の金融制裁を発動し、同国産原油の輸出制限とイラン中央銀行を世界金融システムから孤立させている。同じ金融制裁を北朝鮮に対して全面発動すべきではないか。

 


≪日韓連携で呼びかけよ≫

 


 米国はかつて05~07年に金融制裁を発動して北を動揺させた。だが、北が反発してミサイル・核実験に走り、腰砕けの形で制裁を解除してしまった。しかし、世界の核不拡散体制を揺るがす2カ国のうち、核保有に至っていないイランに金融制裁を発動した以上、核保有を公言する北に再発動してもおかしくはない。

 オバマ氏は大統領再選など内政的配慮よりも、勇断をもって対北金融制裁を復活させるべきだ。アジアの平和と世界の核不拡散体制を守るために、日本も韓国などと連携して米国に働きかけを進めてほしい。


                                 (たかはた あきお)