総額で96兆円超と実質的に過去最高額となる平成24年度予算が成立した。野田佳彦首相は4日夜、「これ以上の先送りは許されない」などと消費税増税関連法案の今国会成立への決意を表明したが、肝心の民主党は審議入りのタイミングや法案審議の舞台をどうするかなど、いまもって確たる方針を示していない。
さらに解せないのは、法案の閣議決定に反対して役職辞任を申し出た小沢一郎元代表に近い29人の処遇について、執行部が直ちに結論を出さずにいることだ。
党内の亀裂拡大を懸念する輿石東幹事長が、問題を先送りしているためだ。輿石氏は今国会では法案成立を図らず、継続審議にする意向とみられている。そんな采配を容認するなら、首相の覚悟が疑われるだけだ。
長時間の党内論議を経て国会提出に至った法案の早期成立を図るのは与党として当たり前だ。だが、4日夜の政府・民主三役会議でも審議入り時期や特別委員会設置などの結論は出なかった。
閣議決定に反対して辞表を提出していた黄川田徹総務副大臣ら政務三役4人について、政府が辞任を了承したのは当然である。同じ理由で党役職の辞任を申し出た29人も辞めさせるのが筋だろう。
小沢氏は産経新聞のインタビューで、野田首相が法案成立を図れば「党内の意見を無視した強権的な政治行動」になると反対姿勢を明確にした。辞任を申し出た議員らも同じ考えに立って組織的に動いているといえる。党の方針に反対し、妨害を図る勢力をなぜ役職につけておくのか。
懸念は消費税増税法案だけではない。赤字国債を発行する特例公債法案や、基礎年金の国庫負担割合維持に年金交付国債を発行する関連法案にも成立のめどが立っていない。財源の裏打ちがないままの予算執行は2年連続で、不正常な財政運営は上向きかけた景気にも悪影響を与えかねない。
国民新党内部が連立離脱をめぐり混乱している問題は、自民党が審議拒否の理由に挙げている。政権与党が体を成していないことが問題なのだ。
鳩山由紀夫元首相のイラン訪問に「二元外交」の懸念が提起された。普天間問題を迷走させた張本人に「外交担当」最高顧問の肩書を与えていることが、無責任な党の体質を見せつけている。