【産経抄】4月4日 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 










開幕したばかりのプロ野球のテレビ中継を見ていて、気になる場面がある。打者がハーフスイングし、ボールと判定されたさい、捕手が一塁や三塁の塁審を指さして主審に「空振り」をアピールする。判断を委ねられた塁審によってアピールが通ることも多い。

 ▼ここ数年とみに増えたようだし、高校野球でもたまに見かける。ルール上認められていることらしいが、これでは間近でストライク、ボールを判定している主審の権威が弱まる気がする。「言った者勝ち」みたいでもあり、どこか釈然としない。

 ▼こんな話を持ち出したのは、関西電力大飯原発の再稼働に対する政府の対応が腑(ふ)に落ちないからである。最初の手はずでは、ストレステストの評価結果を受け、政府が再稼働の可否を判断する。これを地元の福井県とおおい町に説明、合意を得た上で正式決定する、と決めていた。

 ▼ところが政府が協議に入る前日、枝野幸男経産相が突如「滋賀県と京都府知事の理解も必要」と言い出した。「日本全国が地元だ」と暴言まがいの発言もした。試合の途中でルールを複雑にするようなもので、決着がより難しくなるのは理の当然だ。

 ▼しかも、枝野氏は「まだ(ストレステストの評価を)十分に精査できていない」と言う。これでは地元は不安になるばかりだ。再稼働が遅れ、5月以降「原発ゼロ」となったときの責任を地元になすりつけようとしている。そう勘ぐられて仕方ない優柔不断さだ。

 ▼野球の話に戻る。名審判と言われた二出川延明氏はかつて監督からしつこい抗議を受けたとき「オレが野球のルールブックだ」と一蹴した。それくらい気概を持って当たらないことには、地元の合意など得られない。