【女医エッセー しなやかに美しく】
整形外科を受診する患者さんの中には、長い間、外反母趾(がいはんぼし)で困っていたという方も多くみられます。
外反母趾は、足の親指が「くの字」に曲がり、突出部が痛くなる病気で、若い方から年配者まで多くの方にみられます。足の痛みは、例えば小さな靴ずれが一つできただけでも、家に帰りつくのが大変なほど苦痛なものです。
簡単な装具使用と毎日5分間の足の体操で、外反母趾の痛みをコントロールできた70歳の女性患者さんのケースをご紹介します。
約2カ月前、足の親指の変形と痛みを訴え、来院されました。親指は大きく曲がり、飛び出た内側の部分は赤く腫れ上がっていました。エックス線検査の結果、中等度の外反母趾と診断しました。
まずは、赤く腫れた部分に外用の消炎鎮痛薬を使用し、さらに親指と人さし指の間にクッションの挟まるような簡易な装具を使うように指示しました。靴は履き慣れた、ヒールのないものを使用してもらいました。
初診から1週間で強い痛みと腫れは治まったため、外用薬は中止し、装具使用のみとしました。現在は、就寝時の装具使用と簡単な足の体操で痛みはほとんど出なくなり、活動的に過ごされています。
外反母趾の原因は、つま先の細くなったヒールのある靴を履くことであるとよくいわれます。しかし、子供や男性、中年以降の女性に起こる外反母趾も多く、ヒールの靴ばかりが原因とはいえません。
中年期以降の外反母趾の原因は、履物以外に足底の筋力低下や肥満によるといわれます。また、子供や男性に起こる外反母趾では、足底の凹凸のない扁平足(へんぺいそく)が関連している場合が多くみられます。さらに、リウマチや骨折などけがの後遺症による場合もあります。
外反母趾の治療は、種々の予防的治療法と重症例に対する手術療法に大別されます。
予防的治療法には、消炎の外用薬、靴の選択、各種体操、装具などがあり、変形の進行と痛みを抑える目的で行われます。ご自分に合った治療法を組み合わせ、いつまでも快適に歩行していただきたく思います。
足の親指が曲がってきた、または痛みがあるという方は、お近くの整形外科でご相談ください。
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【プロフィル】平田文
ひらた・あや ひらたあや整形外科クリニック(東京都西東京市)院長。昭和43年生まれ。東邦大医学部卒。同大客員講師や山野医療専門学校講師も務める。日本体育協会スポーツ医。