【風を読む】論説委員長・中静敬一郎
自衛隊や防衛問題に関心がある人が過去最高の7割を占める一方、20代に限ると49%でしかない現実をどう考えたらよいのだろうか。10日に発表された内閣府の自衛隊・防衛問題に関する世論調査は、国を守る意識が育まれていない現実をみせつけている。
この傾向はこれまでとそう変わっていない。自衛隊・防衛問題に関心がないと答える20代は前々回(平成18年)56%、前回(同21年)は62%に上った。今回の50%は近年で最も低い数値だ。東日本大震災での自衛隊の活躍などを目の当たりにしたためだろう。
興味深いのは20代の「関心がない理由」である。トップは「自衛隊や防衛問題がよくわからないから」(51%)、次いで「自分の生活に関係ないから」(31%)、「差し迫った軍事脅威は存在しないから」(15%)、「自衛隊は必要ないから」(2%)。全体の数字は順に47%、31%、18%、2%だ。
ミーイズム(自分主義)は平均と並んでおり、「よくわからない」が20代ではやや多いことがわかる。
これらは自衛隊や防衛問題がいかなるものかを教えられていないことを示している。同時に自国の安全保障を考えようとしない、考えずにすんできた、いわば、国の守りがひとごとであることも物語っている。
なぜ、こうなったのか。
自国の安全を他国に委ねた戦後日本の悪弊が、国の独立と平和を守り抜く自立心と気概を損なってきたといえるだろう。
国防の大切さを説くスイス政府編「民間防衛」(原書房)は、ある国が防衛の態度をなにも示さないうちに敗北し、占領された理由をこう説明し、警鐘を鳴らしている。
「その国民の魂が、利害関係のある『友人』と称する者の演説にここちよく酔わされて、少しずつ眠り込んでしまったためである」
戦後の呪縛をいかに解き、独立自存の精神を取り戻すか。新しい憲法作りの意義はそこにある。