指揮官はそのとき(下) | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 










【話の肖像画】前統合幕僚長・折木良一





■災害派遣で信頼醸成

 --自衛隊の派遣人数が震災当日から増えていった理由は何なのでしょうか

 折木 3月11日の夕方、菅首相から自衛隊は最大限活動してくれ、という指示がありました。3万人にしろ、とか5万人にしろという命令は私は聞いていないんです。実態として1日目に8400人で活動を開始して、19日に10万人態勢になるんです。13日の段階では約5万人態勢でした。これだけ災害規模が大きく地域も広い。原発対応もしなければいけない。ただ結果論ですが、10万人が派遣され、約2万人の人命救助をし、1万人弱の行方不明者の捜索をし、ご遺体を収容した。こうした活動は国民に安心感を与え、自衛隊への信頼を醸成することはできたと思っています。やれてよかったと思っています。

 --震災から話が変わりますが、北朝鮮のミサイルの脅威、中国やロシアが日本領海、領空近くに出没する事態についてはどうお考えですか

 折木 防衛力を整備していかねばならないのは当然ですが、国家財政という前提があり、そこはわれわれが言う立場ではなくて、防衛をどういう位置づけにするのかを議論していただきたいなと思います。

 --中国への対応は

 折木 脅威とか対峙(たいじ)ということではなく、中国軍との交流を通じて信頼醸成をやっていくということが大きな柱でしょう。一方で南西諸島や東シナ海情勢については、言うべきことは言い、対応すべきは対応するという2本立てでいかねばならないと思っています。

 --厳しい対応も時には必要ですからね

 折木 尖閣諸島付近に漁船が入ってきても海上保安庁がきちんと対応しています。地道に対応することが大事で、「漁船は(侵犯しても)いい」なんて言っていてはダメなわけで、そこは基本として対応しないと、既成事実化されていくということが主権を侵されるという意味では困るわけです。

 --PKOは非常に高い評価を諸外国から受けています。態勢の増強などは考えられますか

 折木 内局や統幕も国際協力室という専門チームがあって、部隊レベルでは中央即応集団(CRF)の連隊が当面の1次隊としていける態勢は完成していると思います。

                                  (三枝玄太郎)




草莽崛起:皇国ノ興廃此ノ一戦在リ各員一層奮励努力セヨ。 

                      震災後の日米協議に臨む折木さん(防衛省提供)