奪われてなお生きる国民の情操。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 










【解答乱麻】参院議員・山谷えり子





 本日、私は福島県相馬市で東日本大震災物故者の慰霊祭及び復興祈願祭に参列し、明日は政府主催の東日本大震災1周年追悼式に参列する。いまなお厳しい被災地のため、心を合わせて復興を図らねば亡くなられた方々にも申し訳がたたない。

 震災後、私は水も電気もない沿岸部の避難所に泊まりながら被災地を回った。そこには大変な状況でも思いやりにあふれ秩序正しく理性的に行動する見事な人々の姿があった。世界のメディアが称賛した日本人の和合の力、先祖より伝えられてきた力の確かさを感じたものである。

 その際に訪ねた陸前高田の“奇跡の一本松”は報道により有名になったが、実はそのそばの今泉天満宮の境内には樹齢800年といわれる一本杉が津波に耐えて立っている。社殿は悲しいことに津波に押し流されてしまったが、復興のシンボル「天神の大杉」のもとには現在、子供図書館がつくられ、約2600冊の蔵書とともに子供たちの居場所となっている。天満宮宮司の娘さんの荒木奏子さんがお世話をされており「親を亡くした子供たちが多い地区もあります。休日には遠くからも祖父母や親たちが子供たちを連れて絵本を選びに来られます。夜眠る前に本を読んでやりたいといわれるのです」と祈りを込めた声で語られるのを聞きながら、民俗学者の柳田國男の「先祖の話」の一節を思い出した。

 昭和20年4月に戦後の混乱を意識して書き始めたという「先祖の話」には、日本人は死んだら終わりと考えず死後は魂となって故郷の山々から子孫の生業を見守り、幸せと繁栄を祈り続けてくださると考える、と記されている。

 来月4月28日は、連合国軍総司令部(GHQ)の占領から日本が主権を回復して60年目にあたる。占領時代、日本は国史、地理、道徳(修身)教育が禁じられ、書道、武道も教えられなくなり国語教育は骨抜きとなった。国旗掲揚が許されたのは昭和24年であった。

リンカーンは、国民は記憶の糸で繋(つな)がっていると言ったが、日本は6年8カ月の占領政策により国民としての記憶を奪われ、道を求める日本文化を断絶させられた。そして教育内容においては主権回復後も日本人としてのアイデンティティー教育に不熱心な状況が今日まで続いてきたのではないだろうか。いまだに国旗国歌に敬意を払うことができない教育現場があるのは異様なことである。

 しかしそうではあっても家庭や地域の中では、周囲の幸福をまず考える礼節あふれる特質は伝えられ続け教育の場では誠実な教師たちの力により“仰げば尊し我が師の恩”の情操は細くはあっても保たれている。

 今年は古事記編纂(へんさん)1300年でもある。古事記を読めば日本人がいかに優れた自然観、宇宙観を持ち、清明心と創造性、許し譲り合う和の心を持っていたかがわかる。日本の建国の精神は平和と徳の心であり、国の成り立ちは敬い合う姿にあった。

 世界最古の美しい統一国家にして先進国家に住むことの恵みを年配者は次世代へもっと伝えなければもったいない。「上から目線」などという表現にひるむことはない。それを言うならまことに「上から目線」であった占領政策による記憶喪失症から早く回復しなければ、今後断絶は修復できぬほどになるだろう。

 進級、進学の喜びは故郷の先人への“仰げば尊し”の恩と共にある。

                   ◇

【プロフィル】山谷えり子

 やまたに・えりこ サンケイリビング新聞編集長、首相補佐官(教育再生担当)など歴任。1男2女の母。




草莽崛起:皇国ノ興廃此ノ一戦在リ各員一層奮励努力セヨ。