日米関係壊した外交担当、原発事故処理混乱させた
新エネルギー担当。
マット安川 自民党・平沢勝栄さんが今回のゲスト。議論されている「社会保障と税の一体改革」の問題点をはじめ、国防・外交問題や解散の噂などについて伺いました。
全体像不明の増税、協議のテーブルに着かない自民
も同じ穴の狢

衆議院議員(自由民主党副幹事長、衆議院内閣委員会理事) テレビ・ラジオにも多数出演。葛飾区柴又在住。『もう黙っていられない! 』(徳間書店刊)『政治家は楽な商売じゃない 』(集英社刊)『拉致問題 』(PHP研究所刊)など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)
平沢 今国会では、野田(佳彦、首相)さんが消費税を絶対に上げる、不退転の決意で上げるとおっしゃっています。
あと3年ちょっとの間に5%から10%に上げるということですが、その5%分を何に使うのか、いまのところまだはっきりしていません。増税するなら全体像を示して、そのおカネをどこに使うのか明確にすべきです。
さらに、橋本(龍太郎)内閣の時(1997年)に3%から5%に上げたことで景気を失速させたという前例があるわけですから、そうとう慎重にやらないといけません。
私はきれいごとだけを言うつもりはありませんから、増税は必要だと思いますが、しかしその前にやることはいっぱいあります。それをやらないで先に増税ありきでは、国民のみなさんの理解は得られない。
ですから国会議員の定数を思い切って削減するとか、歳費を削減する必要がある。いま国会議員が722人いますが、500人で十分仕事はできます。むしろ一人ひとりの責任が重くなりますから、いまよりもっといい仕事ができると私は思います。
自民党もエラソーなことは言えません。なぜならば、一昨年の参議院選挙で消費税10%と言ったわけですから、協議の場に出なければいけない。
自民党のいまのスタンスは、民主党はマニフェストで消費税増税をうたっていないんだから議論する資格はない、自分たちが政権を取って増税するというものです。
私は谷垣(禎一、自民党総裁)さんにも言いましたが、それでは国民の理解は得られませんよと。カッコイイことばかり言ったって、国民のみなさんからすれば、自民党も10%と言っていたじゃないかということになりますから。
批判ばかりしているんじゃなく、まずは同じテーブルに着いて、民主党が全体像をはっきり示すように求めるとともに、自民党ならばこうするという具体的な案を示すべきです。
社会保障費のムダに切り込む橋下大阪市長に拍手喝采

消費税増税の大きな理由の1つは、社会保障費の増大です。では、社会保障費にムダはないのか。これにも切り込んでいかなければなりません。しかし政治家の場合、社会保障に切り込むのはなかなか難しいんです。
その点で、大阪市長の橋下(徹)さんはよくやっているなと思います。橋下さんは社会保障にも切り込もうとしている。
例えば、いま生活保護の受給者がどんどん増えています。必要な人に支給するのは当たり前のことですが、中には生活保護を必要としないのに受け取っている人がいるのではないか、特に大阪は多いんじゃないかというのが橋下さんの問題意識です。
そこで警察OBを入れて、生活保護が本当に必要なのか徹底的にチェックしようとしている。これは正しいと思いますよ。
私もほかの議員らから聞いてみると、それなりの資産を持って裕福なのにもかかわらず生活保護を受けている人がけっこういるということです。
ベンツに乗りながら生活保護を受けている人もいる。生活保護の費用は市町村が4分の1、国が4分の3を出していますから、こういうところに切り込まないといけない。橋下さんには拍手喝采を送りたいですね。
年金一元化で国民負担が大幅に増大
今国会で問題になった1つが年金です。国民のみなさんにはっきりと知っていただきたいのは、民主党のマニフェストでは、いま受け取っている年金の額よりも少なくなる人がいるということ、また払い込む年金料が増える人もいるということです。
民主党は年金の一元化、すなわち国民年金、厚生年金、共済年金を一元化するとしています。
そして新たな所得比例年金では、払い込んだ保険料に応じた年金を支給するということです。払えない人に対しては最低保障年金を一律7万円支給するとしています。
例えば、現在の国民年金の支払額は月1万5000円くらいですが、所得比例になると保険料率が15%になりますから、収入400万円の人は年間60万円になります。月5万円です。いま1万5000円払っている人が耐えられるのか。
このあいだの国会でこの質問が出た時に、小宮山(洋子、厚労相)さんは、それだけ払えば見返りもあるから当然だというような答弁をしていましたが、国民年金を払っている人からすればたいへんなことですよ。
普天間基地継続使用の共同声明、沖縄県を裏切り続
ける民主党

民主党は、鳩山(由紀夫、元首相)さんを外交担当、菅(直人、前首相)さんを新エネルギー政策担当にする人事を決めたようですが、日本の外交の基軸である日米関係を壊した方が外交の担当になり、東日本大震災が起こった時にムチャクチャな対応をして被害を拡大させた方が新エネルギーの担当になる。
これはブラックジョークどころか、日本の国益を大きく損ねることになりますよ。発案した輿石(東、幹事長)さんもそうですし、承諾する方もする方です。
本来ならば剃髪してどこかで蟄居するというなら分かりますけど、また出てきて何をやるのか、私には分からないですね。
鳩山政権の時に日米関係がガタガタになってしまいました。自民党時代の2006年に、普天間基地の辺野古移転が日本とアメリカの間で合意されました。
アメリカは別に自民党と合意したわけじゃなく、日本政府と合意したんです。それを政権が代わったからと鳩山さんがひっくり返してしまった。そして結局元に戻ってきたわけですが、一度ぶっ潰したものはそう簡単には元には戻りませんよ。
そういう中で先日、日米の共同声明が出ました。あれを見て驚きましたよ。もともとは普天間の移設と嘉手納以南の米軍の施設や区域の返還、海兵隊のグアムへの移転などは全部セットだったんです。
しかし、そのうち普天間の問題は切り離して、海兵隊8000人のうち4700人をグアムに移すこと、嘉手納基地以南の米軍の5つの施設と区域を日本側に返還するなどについて議論するというのが今回の内容です。
これはどう考えても普天間はこのまま固定的に使う、継続使用するということです。これは沖縄県民の気持ちをまったく裏切ったことになります。鳩山さんの責任は万死に値すると思いますよ。