【主張】防衛行政 田中氏は進退判断の時だ。
職にとどまれば、とどまるほど国益を損なっていく。田中直紀防衛相が国防の責任者として不適格なのは、もはやだれの目にも明らかだ。
米軍普天間飛行場移設問題は在沖縄海兵隊のグアム移転と切り離され、普天間が現状のまま固定されかねない局面を迎えている。
当たり前の話だが、米軍再編に関わる防衛相は米国防長官らと早急に協議して、日本が不利益を被らないよう最善を尽くさねばならない。それが望めないのでは、田中氏は防衛相でいる意味がない。自ら進退を判断すべきだ。
6日の参院予算委員会でも、田中氏の資質に疑念を抱かせる答弁が相次いだ。先月31日の質疑の最中に風邪薬を服用するため無断で離席し、議員食堂内でコーヒーを飲んでいた問題で、「国会内でコーヒーを飲むことはしない決意で臨みたい」などと釈明した。
グアム移転計画見直しについては、前任の一川保夫前防衛相ともども、事務当局から報告を聞いただけだったという。防衛相は外相とともに日米安全保障協議委員会(2プラス2)のメンバーだが、再編協議の当事者という自覚があったのだろうか。
唖然(あぜん)としたのは、2日の衆院予算委で自衛隊の合憲性の根拠を問われて明確に答えられなかった点だ。「武力による威嚇と武力行使の放棄」をうたった憲法9条第1項を読み上げたが、質問した自民党の石破茂元防衛相から第2項の「芦田修正」が根拠ではないかと指摘されると、政府は認めていないのに「私自身は理解していない。ご知見を拝聴しながらよく理解したい」と答弁した。
問題はそれにとどまらない。田中氏は普天間移設など在日米軍再編の時期や目標などを定め、日米間で極秘扱いとされていた「手順表」の存在に言及した。同盟の信頼を失墜しかねない。
宜野湾市長選の投票を職員に呼びかけた真部朗沖縄防衛局長の更迭先送りも、指導力不足だ。
野田佳彦首相が資質に欠ける閣僚を相次いで起用した結果であり、任命責任は重大だ。安全保障への適性ではなく、民主党内の融和を最優先させ、小沢一郎元代表に近い一川氏、続いて田中氏を参院から起用した。
日本の安全に不可欠な抑止力の充実を怠り、日米同盟の基盤を掘り崩していると言うしかない。