皇太子さまが平成20年、スペインで水問題について講演された内容の抜粋が、24年度の大学生用英語教科書に収録されることになった。南雲(なんうん)堂(東京都新宿区)が毎年発行しており、13年度版には天皇陛下が米国の科学誌「サイエンス」に寄稿された論文が収録されたこともある。全国約100校の大学で主に新入生向けに使われる教科書で、書店でも購入できる。
来年度の教科書「エコアクションと経済」には皇太子さまの講演抜粋のほか、環境にやさしい熱ポンプや都市鉱山などの取り組みが英文で盛り込まれている。
水運や水資源など水にかかわる問題をライフワークとしている皇太子さまは20年7月、スペインで開かれたサラゴサ国際博覧会のシンポジウムで「水との共存」と題して講演された。この中で皇太子さまは江戸時代の治水や、現代の東京の水道システムと下水処理水の再利用などに言及し、「人類共通の課題である水問題も、個別の問題としては、それぞれの地域の歴史や文化を踏まえた地域主体の解決策が模索されるべきでしょう」と提言された。講演録は宮内庁のホームページに掲載されている。
ご講演を新聞記事で知った教科書の責任編集者、千葉剛(つよし)・東京農大教授(65)が「教科書の趣旨にも合うテーマ。広く学生にも知ってもらいたい内容だ」と考え、宮内庁に打診。以前の掲載実績もあって快諾されたという。
教科書では冒頭の3ページにわたって講演の抜粋が英文で掲載され、読解問題などが付されている。千葉教授は「私が若いころは皇室のご活動が教科書に掲載されることはなかったが、皇室は国民とともにある。教育の場に生かされてもいいのではないかと考え、収録させていただいた」と話している。
(溝上健良)
大学生向け英語教科書「エコアクションと経済」に掲載された皇太子さまの講演録