「阪神」の教訓も忘れるな。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【主張】地震防災





阪神淡路大震災から17日で17年になる。東日本大震災を受け、政府の中央防災会議は昨年末、防災基本計画を修正したが、「阪神」の教訓を地震防災に反映させることも忘れてはならない。

 東日本大震災では、想定をはるかに超えた津波による壊滅的被害が広範囲に及んだ。それに対する痛切な反省から、中央防災会議は、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波を検討」し、防災基本計画の津波対策を抜本的に強化した。

 内閣府の検討会は、東海・東南海・南海地震の震源域が連なる南海トラフ(浅い海溝)の巨大地震について、3地震が連動した場合の想定震源域を従来の約2倍に拡大し、想定される地震の規模をマグニチュード(M)8・7から東日本大震災と同じM9・0に引き上げる中間報告をまとめた。

 最悪の事態を想定し、それに備えることは危機管理の大原則だ。国や自治体が津波対策の強化に取り組むのは当然といえる。

 しかし、ここ10カ月の地震防災の議論は「想定外」をなくすことに重点を置き、地震の想定規模の拡大と津波対策の強化のみに偏った印象も受ける。

阪神大震災では、犠牲者6434人の死因の8割を、倒壊した建物の下敷きになっての圧死が占めた。修正された防災基本計画は、最大級の津波に対し「住民の避難を軸に対策を講じる」としたが、地震の揺れから生き残らなければ津波からも逃れられない。

 首都直下地震をはじめ、各地で想定される大規模地震でも、建物の耐震化が最重要かつ最優先の課題である。

 今世紀前半に起こる可能性が高いとされる南海トラフの巨大地震に関しては、大規模地震対策特別措置法(大震法)の抜本的改正にも大至急で取り組むべきだ。

 現行の大震法は東海地震が単独で起きると想定し、「直前予知の可能性がある」としている。3地震が同時または立て続けに起きる「連動型」への対応が規定されていない。「想定外」だった東日本大震災では、地震学の限界も露呈した。防災面で予知に依存した対策は、地震学の最新の知見が反映されておらず、問題が多い。

 南海トラフ巨大地震を最小被害で乗り切るには、予知の幻想から脱し、連動型に対応できる防災対策の構築が必須だ。