【主張】赤ちゃん戦後最少 結婚しやすい社会作ろう。
日本の人口が急激に減り始めた。厚生労働省の推計によると、昨年の人口減少幅は過去最大の20万4千人で、前年の12万5千人に比べ1・5倍超の激しいペースだ。
高齢化に加え、東日本大震災の影響で死亡数が126万1千人になったこともあるが、何よりも深刻なのは、赤ちゃんの出生数が戦後最少の105万7千人に落ち込んだことだ。
出生数はここ数年わずかながら持ち直していた。戦後最少を更新したのは、お母さんになる年齢の女性が減り始めたからだ。
出産適齢期の女性は今後本格的に減るため、出生数が大幅に増える望みはない。人口減少はさらに進み、毎年50万人、100万人ずつ減る時代の到来も遠くない。
このままでは、社会が急速に縮小し、経済や社会保障制度にも大きな打撃を与える。自衛隊や警察など若い力を必要とする職種で人材確保が困難になり、伝統や文化の継承にも支障を来すだろう。
あらゆる分野で国力の衰退が懸念され、まさに「国家存亡の縁(ふち)」にあると言わざるを得ない。
こうした状況に立ち向かうには、まず国民一人一人が危機意識を持つことだ。そして、出生数の減少ペースを少しでも緩和するよう、官民を挙げてあらゆる手立てを講じることが求められる。
日本では結婚による出産が圧倒的に多い。ところが、昨年の婚姻数は戦後最少の67万組にとどまるという。
これまでの少子化対策は現金給付や保育施設の整備といった「生まれた子供をいかに大切に育てるか」に力点が置かれてきた。こうした子育て支援策の拡充も重要だが、今後は結婚しやすい社会づくりを同時に進める必要がある。
独身者の9割近くが結婚を考え、「平均2人以上の子供を望んでいる」との政府調査もある。だが、低収入や雇用の不安定で結婚したくてもできない人は少なくない。結婚できても経済的理由で子供を持てない夫婦も多い。若者の雇用環境の改善は急務だ。
少子化対策に特効薬はない。結婚や出産に関する国民の希望を妨げている要因を、社会全体で一つ一つ解消していくほかない。
出会いに恵まれず結婚に結びつかないケースも多いが、最近は町ぐるみで応援する取り組みも増えてきている。こうした流れを確かなものにしていきたい。