【名言か迷言か】
衛藤さん、「北朝鮮に、もうだまされてはいけません」
今週、衛藤征士郎衆院副議長が会長を務める超党派の「日朝国交正常化推進議員連盟」のメンバーが年内に訪朝を計画していることが発覚した。衛藤氏といえば、先の臨時国会中の訪朝を検討。いったん延期したものの、年内に訪問するとの見方が出ていたから、やっぱりとの思いだ。
もちろんだが、日朝議連の訪朝には自民党内から反発が出た。16日の拉致問題対策特別委員会(古屋圭司委員長)は訪朝反対の決議を採択した。
決議では、「国民の代表たる国会議員が国交正常化交渉を先行させる行動を取るならば、拉致被害者救出を国会の最優先課題としている、わが国の立場が変わったかのごとき誤ったメッセージを伝えることになりかねない」と強調した。
ここでおさらいすると、日本政府の対応方針は、拉致、核、ミサイルの問題解決後に国交正常化を図る。つまり、拉致問題が解決しない限り、北朝鮮との国交樹立はありえないということだ。
16日の拉致問題対策特別委に出席した衛藤氏は「日朝国交正常化のための軌道をつくり、レールを敷いて、日朝国交正常化のテーブルの上に拉致問題を載せて解決した方が早い」として、政府の方針とは逆の対応を主張した。
さらに、「わが国は6カ国協議の中に拉致問題押し込んだ。その中でプライオリティが一番高いのは核の問題、次はミサイル、最後が拉致だ。拉致問題は6カ国協議の中で、本当は日本と北朝鮮と2国間でやる問題だ。日朝間の国交がない中で、本当に解決が道が開けるのか」と述べたが、だからといって、議連が訪朝したところで、問題は解決に向けて前進するのか。
この日、衛藤氏の主張を真っ向から否定したのは安倍晋三元首相だった。「初めての訪朝でも北朝鮮は欺こうとした。議員外交で日本側に非があったと認めたら、政府は強い立場を二度と取れない」と議員外交に待ったをかけた。
そして、「普通の国であれば、交渉すれば結果は出るが北朝鮮という国は、結果がでるような甘い国ではない。何回も何回も何回も何回も、だまされ続けてきた事実から学び取らなければならない」と指摘した。
それでも、この日の決議に衛藤氏は賛成しなかった。会合後、記者団に「凍り付いた日朝国交交渉の歯車を回すきっかけを議員外交でつくるべきではないか」と述べ、今後も訪朝を模索する考えを示した
衛藤氏は「北朝鮮から招請状をもらったのだから、行かないと失礼に当たる」と周辺に語っているそうだ。しかし、外交とは下(した)手(で)に出た段階で負けである。既に衛藤氏は負けているということだろう。外交は恋愛に似ているというが、恋愛でもすがった方は負けである。
そんな衛藤氏が北朝鮮に行けば待ち望む拉致被害者の帰国が遠のくだけだ。本当に拉致問題の解決を衛藤氏が望むのなら、ぜひ再考していただきたい。
(小島優)
◇…先週の永田町語録…◇
(12日)
▽正三角形でない
前原誠司民主党政調会長 党内に「日米中は正三角形だ」と言った人もいるが、同盟を結んでいる国とそうでない国の関係が正三角形になるはずがない。(日米中3カ国の関係について、パネルディスカッションで)
▽最悪の年
谷垣禎一自民党総裁 東日本大震災など自然災害や円高が起こり、政権与党は対応する力を欠いていた。日本にとって今年は最悪の年ではなかったか。(平成23年を振り返り、記者団に)
(13日)
▽これからだ
輿石東民主党幹事長 国民の期待に十分応えているとは言えない状況だ。さあ、これからだという新たな思いで新しい年を迎えたい。(記者会見で1年を振り返り)
▽骨を切る
岸田文雄自民党国対委員長 批判を浴びても、泥をかぶっても、やってしまう思い切りを持つ人間も必要だ。これを担うのが野党の国対。肉を切らせて骨を切る。国民のために政権交代を迫らないといけない。(自身のパーティーであいさつ)
(14日)
▽首相は浮世離れ
亀井静香国民新党代表 浮世離れしたことをやっている。連立を組んでいるが、極めて残念だ。野田佳彦首相には非常時との認識が欠如している。(消費税増税方針などについて記者会見で)
▽もてあそぶな
石破茂自民党前政調会長 自民、民主両党は「この国の財政を何とかしなければいけない」とのコンセンサスを持たないと。衆院解散の話をあまりもてあそんではいかん。(消費税増税議論に関連しシンポジウムで)
(15日)
▽切り開く
野田佳彦首相 iPS細胞のような成果が次々生まれ、多岐にわたるフロンティアを切り開くことが、わが国が直面する諸課題を克服し、日本再生を進める上で重要だ。(総合科学技術会議で)
▽失礼な対応
林芳正自民党政調会長代理 民主党の政調会長と合意しても実務者になればゼロ回答。党内で連携がないのか、政調会長が中身をご存じないのか分からないが、非常に失礼な対応をしていただいている。(党会合で)
(16日)
▽とにかく行革
蓮舫行政刷新担当相 私の立場はとにかく行政改革だ。事業仕分けや提言型政策仕分けで明らかになった課題の結果を出していく役割だ。(消費税増税への国民の理解をどう得るかについて記者会見で)
▽霞が関向き
渡辺喜美みんなの党代表 消費税増税に向けた野田佳彦首相の「不退転の決意」は、霞が関に向かって「私は増税しますからよろしくね」と言っているように聞こえる。(記者会見で)