成果を沖縄の信頼回復に。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【主張】日米地位協定





 在日米軍の軍人らの法的地位を定める日米地位協定をめぐり、米軍属が公務中に起こした事件や事故について、米側が刑事訴追しない場合は日本側で裁判を行えるように運用を改善することで両国政府が合意した。

 第1次裁判権を持つ米側の対応次第で米軍属らが罪に問われず、沖縄県の県民感情を傷つける結果となってきた経緯がある。協定を現実的に運用することで日米同盟関係を円滑に進めることが重要だ。

 仲井真弘多知事は「県民の胸にすとんと落ちる部分がある。高く評価すべきではないか」と合意を歓迎した。民主党政権は普天間飛行場移設問題を迷走させ、地元の信頼を失った。地道な成果を信頼回復へつなげ、移設実現の努力を一層加速しなければならない。

 合意に基づき米側は、同県で今年1月に交通死亡事故を起こした米軍属の裁判権を放棄し、一度は不起訴処分とした那覇地検が自動車運転過失致死罪で起訴した。

 民主党はもともとマニフェスト(政権公約)で「対等」な日米関係をうたい、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の見直しなどとともに「日米地位協定の改定」を提起するとしていた。

しかし、日本との協定改定に応じれば、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や韓国などからも米国への改定要求が出かねない。改定を無理強いすれば、同盟関係が悪化する懸念が指摘されてきたのもこのためだ。

 自社さ政権でも平成7年の同県の少女暴行事件後、殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪事件では運用改善によって起訴前段階で被疑者引き渡しを可能にした。

 そうした経緯も踏まえて、野田政権が地位協定改定にこだわらずに合意を実現したことは評価できる。玄葉光一郎外相が「負担軽減の努力を努力で終わらせず、一つ一つ実現させる」と語ったのは妥当だろう。

 地位協定を受け身の立場で考えることが多かった日本も、今は自衛隊の海外派遣で派遣先政府と協定を結ぶ関係になっている。

 海上自衛隊が海賊対処活動の拠点を置いているジブチ政府と結んだ地位協定でも、隊員らが刑事訴追免除などの特権を持つことが規定されている。地位協定は軍や部隊が他国で安心して任務を果たす上で、不可欠なものだ。そのことを忘れてはなるまい。