【主張】横田さん拉致34年 あらゆる情報を精査せよ。
13歳の中学生、横田めぐみさんが新潟市の海岸から北朝鮮に拉致された事件から15日で34年がたつ。野田佳彦政権は、めぐみさんら多くの拉致被害者が帰国できていない現実と、改めてしっかり向き合うべきだ。
最近、めぐみさんの生存情報が相次ぎ韓国からもたらされた。
一つは脱北者の証言だ。脱北者が2004年末から05年初め、朝鮮労働党で日本人拉致を担当した人物の息子である日本担当者と平壌市内で会食した際、めぐみさんが生きているという話を聞いたという。この情報は韓国野党議員のホームページで公表された。
もう一つは、韓国の週刊誌が入手した平壌市民の名簿に、めぐみさんと生年月日などが一致する女性がいるという情報である。この名簿は北の秘密警察が02年ごろから収集したデータをもとに、05年に作成されたとされる。
脱北者の情報は伝聞で、名簿についても、女性の血液型がめぐみさんと一致しないなど整合しない部分がある。しかし、いずれも、めぐみさんが1994年に死亡したとする北朝鮮の主張を覆す手がかりになる情報である。
政府の拉致問題対策本部は担当者を韓国に派遣し、脱北者との面会を含め詳しく調査すべきだ。
名簿には、拉致被害者の曽我ひとみさん、ジェンキンスさん夫妻も掲載されていたという。同誌の協力を得て、他の被害者の有無も徹底調査したい。
北朝鮮は3年前、めぐみさんら拉致被害者の再調査を約束しておきながら、何の返事もない。追加制裁を視野に、再調査を求めるべきことは言うまでもない。
15日には、平壌でサッカーW杯アジア3次予選の日本-北朝鮮戦が行われる。山岡賢次拉致問題担当相は観戦ツアーに組み込まれている観光日程の中止を求めた。本来、経済制裁で北への渡航を自粛しなければならない時期だ。観光中止は当然である。
先月、めぐみさんが卒業した新潟市内の小学校の元校長で、支援組織「救う会新潟」会長の馬場吉衛さんが90歳で死去した。家族会も高齢化している。めぐみさんの両親は70代半ばを超え、被害者、有本恵子さんの両親は80代だ。
野田首相は就任後、家族会と2度、面会し、鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相より誠意を見せている。それを行動で示すべきだ。
拉致被害者・特定失踪者
全員奪還・救出させてこそ
誠意といえるのではないか?