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被災地を訪れる元大リーガーのカル・リプケン氏(51)
「テレビで見た映像は一人の人間として、とても忘れ去ることができない記憶を残した」。同時に、「何とか立ち直ろうと、前に進もうとする日本の国民の力強さに大変感銘を受けた。私自身も何かお手伝いができないかと思った」。
195センチの堂々たる体格は「鉄人」の異名を取った現役時代とさほど変わらない。東日本大震災の被害について話が及ぶと、自然と力が入る。
2632試合連続出場記録を持つ元米大リーガー。米国の復興支援「トモダチ作戦」の一環で来日した。10日、野球教室を通じて被災地の子供たちを勇気づけようと大きな被害を受けた岩手県大船渡市を訪れる。
現役時代からファンを大切にする人柄で知られた。1994年にオーナー側と選手会が対立し、シーズン途中から越年する史上最大のストライキ。第二次世界大戦中も開催されたワールドシリーズさえ中止され、失望した多くのファンの足が球場から遠のいた。翌95年、ファンを呼び戻すために長い列の最後の一人までサインを続けたことは良く知られる。
引退後の2007年から米国務省のスポーツ大使を務めるほか、野球の国際普及や交流にも尽力。中国やニカラグアを訪れ、野球を通じた国際交流に力を入れてきた。
日本プロ野球最多の2215試合連続出場記録を持ち、友人でもある衣笠祥雄氏(元広島)と足を運ぶ被災地では、70人の中学生が触れ合いを待っている。
被災者が負った深い傷は簡単に癒(いや)せないかもしれないが、「どんなに短い時間であっても、子供たちが笑顔になってくれれば成功だ」と、野球の力を信じている。
(田中充)
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カル・リプケン 1960年8月24日、米メリーランド州生まれ。81年、ボルティモア・オリオールズで大リーガーとしてデビュー。2001年に引退するまでオリオールズ一筋でプレーした。2632試合連続出場のメジャー記録をはじめ、オールスターに19回出場し、ア・リーグの最優秀選手に2回選出された。史上8人しか達成していない通算3000安打と400本塁打をマーク。07年に米野球殿堂入り。
会見で質問に答える元米大リーガーのリプケン(カル・リプケン・ジュニア)氏
=9日午前、港区の米国大使館(大里直也撮影)
ゲッツー指導で実演してみせるリプケン氏