日本も本格的に武器輸出せよ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【笠原健の信州読解】武器輸出大国化を目指す韓国




政府・民主党内で武器輸出三原則の見直しに向けた動きが出ている。わが国の防衛産業の国際的な成長を促すためにも武器輸出三原則の抜本的な見直しは急務だが、持論をあっさりと引っ込めるのがお得意の野田佳彦首相のことだから、ここでも「やっぱり、止めた」ということになってしまうかもしれない。だが、わが国が自ら手かせ足かせをはめてモタモタしているうちに防衛産業の国際市場に進出を果たしている国がある。それが韓国だ。

 今、世界の防衛産業で注目されている問題の一つに米空軍のT-X計画がある。この計画は旧式化したT-38練習機の後継機を導入しようというものだが、採用機数は最大で500機にもおよび、防衛産業にとっては巨大な商戦となる。このT-X計画の候補の一つになっているとされているのが韓国航空宇宙産業(KAI)が開発したジェット練習機、T-50だ。

 米国の財政悪化によって計画そのものが先送りされたり、米国内の雇用確保優先ということから、米国製の練習機採用に落ち着くということもあり得るが、米空軍の練習機に韓国製のジェット練習機が採用されれば、韓国にとっては歴史的な快挙になる。

すでにT-50はインドネシアへの売り込みに成功しており、16機を総額4億ドルで購入することで合意している。韓国はインドネシア以外の東南アジア諸国、中東諸国、東欧諸国へのT-50の売り込みも狙っている。韓国の売り込みはT-50だけでない。インドネシアとは400トン規模の潜水艦3隻を建造する交渉にも入っている。

 もっとも韓国の武器輸出は必ずしも“順風満帆”というわけではない。今年2月にはT-50などの武器購入を含む経済協力について協議するためソウルを訪問していたインドネシア政府特使団一行の宿泊先にスパイが侵入したが、見つかってしまい大騒動となった。韓国内の報道では侵入した男女3人は国家情報院の職員とみられ、インドネシア側の交渉条件などを探るのが目的だった、という。

 また、主砲120ミリ滑空砲を備える韓国国産戦車のK2はトルコとライセンス生産の契約を交わしたが、開発の遅れなどからトルコから契約内容の一部解消の要求を突きつけられている、といった問題も抱えている。

 ただ、韓国政府は防衛産業の育成を国策として位置づけており、韓国製の家電、乗用車、半導体が海外市場で大きなシェアを占めるに至ったのと同じように、近い将来、武器輸出国の上位に韓国が躍り出る日が来るかもしれない。

今年2月にアラブ首長国連邦のアブダビで開かれた中東・アフリカ地域で最大規模の国際兵器見本市(IDEX)には韓国からサムスンタレス、ハンファ、KAIなど17社が出展。また、ソウルでも10月に「ソウル国際航空宇宙防衛産業展示会」が開かれ、31カ国から314社が参加。韓国もT-50や国産ヘリ「スリオン」などを展示し、自らの軍事技術をアピール。韓国企業は約6億5000万ドルを受注した、という。

 今回は韓国を引き合いに出したが、世界の多くの国が武器輸出を行っている。わが国と同様に第2次世界大戦で敗戦国となったドイツは今や世界でも有数の武器輸出国だ。レオパルト戦車はオランダ、カナダ、スペインなどに輸出され、通常動力型潜水艦209型をギリシャ、アルゼンチン、トルコなどに輸出している。武器輸出=「死の商人」といった発想に陥りがちだが、スイスやスウェーデンだって立派な武器輸出国だ。スイスのピラタス社は航空機製造会社として有名で、わが国へ練習機の売り込みをしたこともある。スウェーデンではやはり航空機製造を手がけるサーブ社が知られており、サーブ社のジェット戦闘機、グリペンは南アフリカ、ハンガリー、タイなどに輸出されている。

民主党政権のやることだから、武器輸出三原則の見直しもどうなるかは予断を許さない。巨額な研究・開発費がかかる戦闘機や海軍艦艇などの製造は国際的な共同開発がもはや国際的な常識だ。既に世界の防衛産業は国境をまたいだ大規模な再編を経ており、BAEシステムズ、ロッキード・マーチン、レイセオン、ボーイング、タレスなどがメジャーな存在だ。

 武器輸出の緩和は、わが国の防衛産業がこれらメジャーとの激しい競争にさらされるということも意味する。限られた防衛予算の中で少量生産によって技術が消失することを防いできたといってもよいわが国の防衛産業はあっという間にメジャーに吸収されるか、その傘下に入らなければならない恐れがある。ただ、このままの状態でも早晩、わが国の防衛産業は立ちゆかなくなるのは確実だ。そうだとしたら前に進むしかない。


                              (長野支局長 笠原健)