【主張】がれき処理
東日本大震災で発生した岩手県宮古市のがれきの第1便、約30トンが東京都に到着した。東北地方以外で受け入れるのは初めてだが、東京に続く自治体が名乗り出ないのは、どうしたことか。
石原慎太郎都知事は4日の会見で、「みんなで協力しなければしようがない。自分のことしか考えないのは、日本人がだめになった証拠の一つだ」と語った。同感である。今こそ、被災地の痛みを分かち合おうと誓った震災直後の決意に立ち返るべきだ。
岩手県と協定を結んだ都は、年度内に1万1千トンのがれきを受け入れ、さらに平成25年度までに岩手、宮城両県分の計50万トンを処理する方針だ。だがこれは、総量のほんの一部にすぎない。
原則県内処理を決めた福島県を除いても、宮城県には約1820万トン、岩手県には約435万トンのがれきがあると推計される。
環境省によると、受け入れを実施している市町村は東京都と山形県内の6カ所、検討中は48カ所にとどまっている。
震災直後の4月の段階で受け入れを表明していた572市町村からは激減した。これでは、環境省が処理完了の目標としている25年度末までの達成は不可能だ。
一度は挙げた手を下ろさせたのは、主に住民の反対だという。「放射能をばらまくな」「汚い」といった声に議会などが過剰反応したと聞くと、悲しくなる。
都へも「子供の健康が心配」といった反対の声が多く寄せられた。それでも、石原知事は「持ちつ持たれつで被災地を救うべきだ」と受け入れを決めた。同じ決断が、どうして他の首長にできないのだろう。
都内3カ所の中間処理施設に運び込まれたがれきからは、放射線量は検出されなかった。被災地でも定期的に測定、公表を続けており、基準値を超えたものは搬出されない。
むしろ、がれきの中には、ネクタイやぬいぐるみといった被災者のぬくもりを感じさせるものが泥にまみれ、涙を誘うという。「汚い」といった拒絶の理由は、恥ずべき感情ではないか。
がれきの処理は、復興への第一歩である。指導や調整役として、国のリーダーシップが重要だ。それとともに、住民から声が上がり、進んで引き受ける自治体が増えていってほしい。