日本が外交・防衛で今すぐやるべきこと。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





国益を守るためにお金をかけずにできることは

山ほどある。


草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員奮励努力セヨ。 


2011.11.02(水)勝山 拓




 注目された第178回臨時国会が閉幕した。「東日本大震災からの復興・復旧と原発事故の終息」「日本経済の立て直し」は言うまでもなく現在の我が国の最重要課題であり今次国会においても総理大臣は「現在の内閣はこの最重要課題を処理するのが最大の使命」と述べた。

 その通りだが、外交・安全保障に関する国家意思の明確化や関連法令の整備は最重要課題ではないのか?

 周知の通り我が国の安全保障環境及び国際社会においてしかるべき存在感を維持していくための環境は極めて厳しくなっている。

日本の大震災を自国のために利用する周辺各国

 中国は、周知の通り1992年に領海法、97年に国防法を制定して東シナ海や南シナ海の支配の意図を明確にし、海軍を中心に軍事力の増強とその運用力の強化に邁進してきた。

 最近は我が国が東日本大震災という国難への対応に追われている間に、周辺海域での海軍のデモンストレーションや我が経済水域での我が国が認めた以外の行動を繰り返し、尖閣諸島の領有権はおろか東シナ海の油田開発などについても我が国の主張など取りあおうともしない。

韓国大統領、竹島実効支配の強化を言明 震災支援は別

韓国に不法占拠されている竹島〔AFPBB News

 


ロシアや韓国の竹島・北方4島に対する実効支配強化の動きも極めて露骨である。

 一方、米国は今世紀を迎えて世界規模の米軍再編に着手し、我が国はこの動きに応じて普天間問題の解決やその他沖縄県民の負担軽減を企図し地道な努力を重ねてきたが、現政権はこの努力を一顧だにしていない。

 日米同盟の深化などと言いながら、普天間問題を解決が極めて困難な状態に陥れて米国の不信感を増幅し、同盟関係に大きなひびを入れてしまった。

 国内問題は相手が日本国民であるが、外交・安全保障問題の相手は自国の国益を最優先するしたたかな諸外国である。

 特に我が国の周辺には、東日本大震災への対応に追われる我が国の弱みに付けこみ国際法や歴史的事実を無視して我が領域や海洋権益を侵そうとする、あるいは我が領土の実効支配を強化している国々がある。

 これらの国への対応をこれ以上曖昧なままで先送りすることはすべきでない。

我が国の外交・安全保障の基盤である国防に関する国家意志の明確化と日米同盟の信頼性回復・強化は、まさしく「東日本大震災からの復興・復旧」「原発事故の終息」と並ぶ我が国の喫緊の課題である。

 しかしこの点に関して今次国会では論議されることはなかった。またしても先送りである。

 財政が逼迫していても、国内問題が山積していても、外交・安全保障問題は避けて通れない。しかもこの分野ではお金をかけずにできることはある。

先送りできない外交・安全保障問題

 私は今こそ国際法の積極的な活用と国際社会への我が国の意思の明確な発信、安全保障の実効性を高め諸外国に我が国の発言に耳を傾ける気にさせるに必要な、国内法令の整備を国内問題への対応と並行して実施すべきと考える。

 


 具体的には以下の点が挙げられる。


●国際法の積極的な活用と我が国の意思の明確な発信の点で言えば、竹島や北方領土問題の国際司法裁判所への提訴、東シナ海海底資源問題の国際海洋法裁判所への提訴だ。

 もちろん相手が同意しないと裁判は開かれないが、そうであっても国政府はあらゆる国際会議の場やグローバルなメディアを利用して間断なく世界にアピールしなければならない(竹島問題は提訴の動きがあるようだが国内でさえあまり知られていない)。

 さらに、我が国周辺海域での中国の不法行為や威圧行為、竹島や北方4島に関する韓国やロシアの行為に関して、相手の威圧的あるいは不法な行為がある都度間髪を入れず、それが我が国にとって許しがたいことを相手に明確に伝え、それを世界中にアピールすべきだ。


●国家が整備すべき法令の基盤である憲法に問題があることは周知の通りだが、その改正は我が国の現状からみて早急に実現できるものではない。

 しかしそのほかにできることがある。特に急ぐべきなのは、自衛隊に領域警備(自衛権の行使の範疇)および海洋権益の防護(海洋の秩序維持に関する国際的義務の側面もある)の任務を平時から与えることだ。


●外国海軍などの行動に自衛隊を対応させなければ抑止できない事態が起こっている現状を認め、自衛隊に平時の部隊行動基準(交戦規則)を付与すること。これは自衛隊に対するシビリアンコントロールの重要な役割の1つである。


●同盟国間の集団的自衛権行使を認め国際社会に宣言すること。


●いわゆるスパイ防止法を制定すること。


●以上の懸案は安全保障・外交面で我が国が早急に解決すべき重大課題であることを政府が真摯に国民に語りかけること。

付言すると、普天間飛行場の辺野古海岸への移転および8000人の海兵隊員のグアム移転は、沖縄の人々の大きな負担軽減になるのは間違いない。問題はそれだけではないと承知しているが、政府は先ずこの移転を速やかに実現すべきだ。

尖閣諸島の占領を前提にする議論など論外

 最後に最近特に気に懸かる2点を述べておく。

 我が国には様々な立場や視点からの対米不信感が根強く存在する。日露戦争後に始まり昭和になって直面した米国の対日敵視政策、戦後の極東軍事裁判、日米経済摩擦、米国主導のグローバル経済が発生させた問題などが影響していよう。

中国がレアアース対日輸出を禁止か、尖閣問題で NY紙

旭日旗を破る漁民〔AFPBB News

 


 しかし国際関係は相互的なものであり独りよがりが通じる社会ではない。この点を冷静に認めないと我が国は昭和初期に重ねた外交上の失敗を繰り返すこととなる。

 残念ながら、現在安全保障面で米国との信頼関係を損ねているのは日本の政治そのものであり、そのような政治を増殖したのがほかならぬ日本人であることを認めなければならないのではないか。

 米国に対しものを言うことが大切なのは言うまでもないが、信頼できないならば相手をその気にさせる努力も必要だ。悪しざまに言うだけでは中国などが喜ぶだけだ。

 2点目、最近「尖閣諸島が占拠された場合の奪還に必要な兵力整備を」などと声高に言う向きもあるが、占拠されることを前提にするなど全くのナンセンスだ。

 占拠の抑止・阻止を最優先すべき、すなわち海空重視だ。国土防衛の強い意志を明確にするため基幹となる陸上兵力が必要なのは言うまでもないが、海・空兵力は動員型ではないので一旦整備の手を抜くと再建に大変な時間と経費がかかることを述べておきたい。