【主張】南スーダンPKO
今年7月に独立した南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に陸上自衛隊の施設部隊を派遣する方針を政府が発表した。首都ジュバに向け、来年早々にも約200人の先遣隊が入り、来春には施設部隊約300人が現地入りする。5年間を想定しているようだ。
国連は新たなPKOとして、8000人規模の南スーダン派遣団(UNMISS)を計画し、早くから日本に参加を要請していた。今回の方針決定は、国際貢献への野田佳彦政権の前向きな姿勢といえる。
UNMISSに参加すれば、陸自は、昨年2月からのハイチ地震復興支援や東ティモール、ゴラン高原を合わせ、計4件のPKOに同時に展開することになる。東日本大震災の打撃で日本が内向きになっていないことを、世界に示す意味がある。
20年以上に及ぶ内戦を経て誕生した南スーダンは、日本の1・7倍の国土に舗装路が70キロほどしかない。インフラ整備が急務だ。ハイチPKOでは、約300人が派遣され、規律と能力が国際社会の高い評価を受けた。南スーダンでも期待に応えるだろう。
一方で、残念なのは、国際基準を無視した派遣になっていることだ。任務遂行への妨害行為を排除するために武器を使うという、国際的に当然、認められている行動が許されないのだ。
しかも、現行のPKO協力法は、自衛隊員の武器使用を▽正当防衛や緊急避難時▽自己の管理下に入った者を守る目的のみ-と厳しく限定しており、邦人救出や他国部隊の救援にも武器を使用できない。
民主党の外交安全保障調査会は昨年、「駆けつけ警護(文民や他国の要員の防護に必要な武器使用)」を認めるよう提言したことがある。だが、野田首相は派遣発表前日の衆院本会議で「現行法の枠内での派遣」と答弁した。
南スーダン北部では10月末、創設間もない政府軍と反政府武装勢力の戦闘があり、約80人が死亡している。藤村修官房長官は「PKOへの脅威はない」というが、武装解除に応じない勢力も少なくなく、国際社会の一員として責任ある行動を取れないことは、禍根を残しかねない。
陸自派遣までまだ時間がある。党派を超えて法的不備を是正することが立法府の急務である。