黒に染まっていく赤い政権。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





【石平のChina Watch】

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111027/chn11102711110002-n1.htm





 今月11日、中国山東省の青島市で衝撃的なニュースが走った。青島市の北区と李滄区の2つの市区の公安局長が地元の暴力団の犯罪活動に手を貸したことで摘発されたのである。中国では最近、「黒社会」と呼ばれる暴力団組織と地方公安との癒着関係がよく取り沙汰されるが、人口700万人の大都会で2つの市区の公安のトップがヤクザ集団の犯罪に関わっていたとは…さすがに中国でも注目のニュースとなっている。

 

 中国では近年、黒社会の肥大化と組織数の急増が深刻な社会問題として浮上してきている。今年の9月に公安部が公表した数字によると、中央政府が2006年2月から「黒社会撲滅闘争運動」を継続的に展開して以来、全国で撲滅された黒社会組織の数は2131に上り、準組織としての「悪勢力グループ」が2万4千以上も潰された。

 

 政府主導の「黒社会撲滅闘争」が5年半にもわたって展開されてきたことが逆に、中国における黒社会の広がりとその強靱(きょうじん)さを浮き彫りにしているが、「撲滅闘争」の成果として挙げられた上述の数字は当然、全国に広がる黒社会の氷山の一角にすぎない。この国には一体、どれくらいのヤクザ組織や「悪勢力」が暗躍しているのだろうか。

「黒社会」が広がった背景には、失業の拡大や底辺に住む人々の不満の高まりなどの社会的要因があると思うが、前述の「青島事件」で見られたような公安とヤクザ組織との癒着関係もまたヤクザを増長させた理由の一つであろう。ヤクザを取り締まる側の公安が逆に彼らと手を組んでしまえば、それこそ「暗黒世界の出現」というしかない。

 

 このような「暗黒世界」が目の前の現実となったのは、今から2年前、人口3200万人の大都会・重慶市においてである。

 

 当時、重慶市の現役の公安局長、副局長および市人民法院(裁判所)の副院長(副裁判長)や市検察庁の副検察長などの司法・公安のトップがそろって市内の黒社会組織と手を組み、ヤクザたちの「保護傘」となる代わりに彼らから莫大(ばくだい)な利益提供を受けて私腹を肥やした。そして、ヤクザたちは司法と公安を完全に「押さえた」後には、もはや何も恐れることなく殺人や覚醒剤密売や悪質な地上げや「覇市(暴力による市場独占)」などの犯罪行為をほしいままに行った。ヤクザが「闇の世界」だけでなく表のビジネス世界の一部までを牛耳っていて、重慶市そのものを食い物にしていたのである。

 

 一党独裁体制下の政治・司法権力とヤクザとの結合が結局、「黒社会の黒天下」(中国国内新聞)を生み出したわけだが、そのことは当然、共産党政権の独占権力が外部勢力によって侵食されたことを意味する。

去る9月16日、中国公安の総責任者である孟建柱国務委員兼公安部長が「黒社会撲滅闘争」関連の全国会議で「われわれは黒勢力の政治領域への浸透を最大限に食い止めなければならない」と発言したのは、まさにヤクザの政治権力への侵食に対する政権側の危機感の表れだが、孟部長がここで、「断固として阻止する」とか「徹底的に撲滅する」とかの政府慣用語を使わずにして、「最大限に食い止める」という自信のなさそうな言葉で「決意表明」したのも実に興味深い。

 

 要するに政権としては、ヤクザ組織による政治権力への浸透を完全に封じ込めることはもはや不可能だと悟っているようだが、そのことはまた、当の共産党政権はすでに末期症状を呈していることの証拠であろう。「黒」に染まっていくこの政権にもはや「未来」というものはないのである。




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【プロフィル】石平

 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。




草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員奮励努力セヨ。 

    暴力団組織の癒着の温床として、警察の摘発を受けた北京市内の高級クラブ=2010年(共同)