ウォン安回避で支援拡大 日韓首脳会談で合意
【ソウル=阿比留瑠比】
韓国訪問中の野田佳彦首相は19日午前、ソウルの青瓦台(大統領府)で、韓国の李明博大統領と会談した。両首脳は欧州金融不安を受けたウォン安回避に向け、韓国への資金支援枠を現行の130億ドル(約9900億円)から700億ドル(約5兆3600億円)に拡大することで合意した。平成16年から中断している経済連携協定(EPA)交渉に関しては、早期再開に向けて実務者レベルでの協議を加速化させることで一致した。ただ、大統領は再開を明言しなかった。
両首脳の会談は、9月に米ニューヨークでの国連総会の際に行って以来2回目。首脳会談を目的とする首相の外国訪問は韓国が初めて。
会談で両首脳は未来志向の日韓関係を築いていくことで一致した。北朝鮮の核問題について日米韓3国が緊密に連携し、非核化に向けた具体的な行動を北朝鮮に要求することを確認。大統領は拉致問題に関し、改めて支持と協力を伝えた。
また、日韓両国が協力して取り組むべき国際的課題について検討する「日韓新時代共同研究プロジェクト」の第2期を開始することで合意した。
首相は6月に発効した日韓図書協定に基づき、日本統治時代に朝鮮半島由来の古文書1205冊のうち、「朝鮮王朝儀軌」など5冊を大統領に引き渡した。協定で古文書は12月10日までに引き渡すことになっており、首相は「なるべく早い時期にお越しいただきたい」と述べ、大統領の12月上旬の国賓としての訪日を招請した。
ただ、もともと韓国国会が返還要求決議をしていたのは「儀軌」(167冊)だけで、日本側は求められた以上の大盤振る舞いをした形だ。一方で、図書協定は韓国が保管する「対馬宗家文書」(約2万8千冊)など日本由来の古文書の引き渡しは求めていない。この問題について首相は会談で「韓国にも日本に関連する文書がある。それへのアクセスの改善を期待する」と述べた。
韓国政府が元慰安婦の賠償請求権に関する政府間協議を求めている問題は、会談では出なかったという。