ロータリーよ永遠に。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







【from Editor】


草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員奮励努力セヨ。 

RX-8の特別仕様車「RX-8 SPIRIT R」



マツダの「魂」であるロータリーエンジン(RE)搭載車が姿を消すことになった。唯一の「RX-8」の生産が来年6月に終了し、後継車の発売予定もないという。各国で厳格化される環境規制に対応するのにコストがかかりすぎるため、というのがその理由らしい。1991年にル・マン24時間レースを制したRE搭載車「マツダ787B」が今年、フランスや日本各地でデモ走行を行ったが、いま思えばそれは「お別れの旅」だったのかもしれない。

 REは世界でマツダだけがつくる唯一無二のエンジンである。ベンツなど各社が開発に挑んだが果たせなかった難物だ。マツダのホームページに「ロータリーエンジン開発物語」がつづられている。その中で印象に残っている場面がある。

 「寝ても覚めてもロータリーエンジンのことを考えてほしい。赤穂浪士の苦労を思い起こして耐えてほしい」。当時の研究部長だった山本健一氏(のちに社長)はRE研究部が発足した初日に、研究に携わる部員47人を赤穂浪士47人の武士になぞらえてこうあいさつしたという。それから苦節6年、67年5月にREを初搭載した「コスモスポーツ」の量産化に成功したのだ。

 REはその後、レースでも伝説を作る。71年12月に行われた第6回富士ツーリスト・トロフィーレース。マツダからはRE搭載車のカペラとサバンナが参戦し、サバンナが一騎打ちの末、日産スカイラインGT-Rの50連勝を阻止した。20年後の91年にはル・マンを日本車として初制覇しREの優位性を世界で証明したのである。

 だが、REには燃費が悪いという“弱点”があった。70年代のオイルショックでは悪者扱いされ、米国では「ガスガズラー(ガソリンがぶ飲み車)」の汚名を着せられたという。RE搭載車の販売累計は200万台を数えるまでになったが、エコの波に押されて、2010年のRX-8の世界販売は約2900台にとどまった。輝かしい実績を持つREも時代の流れには逆らえなかったのだ。

 「RX-8」生産終了発表の記者会見で山内孝社長は「ロータリーエンジンが愛されていることを強く実感している。今後も研究開発を継続する」と話した。排ガスが出ない「水素エンジン」などで捲土(けんど)重来を期すという。夢のエンジンを新生ロータリーで見せてほしい。「ものづくりニッポン」の底力を持つマツダならきっとできる。

(副編集長 黒沢通)