【主張】中国軍機急増
領空侵犯の恐れのある外国機に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)回数で、今年上半期(4~9月)の全203回のうち対中国機が83回に上り、昨年同期比で3・5倍に増えた。
空自は平成21年から沖縄県の那覇基地にF15戦闘機部隊を置くなど、南西地域の防空を強化している。だが、スクランブル急増は中国の空軍力の増強や活動の活発化をまざまざと示している。
最近まで日本に有利と判断されていた東シナ海の海・空軍力のバランスが崩れてきたのではないかという重大な懸念が生じている。必要な抑止力を維持・強化することが急務である。
スクランブル急増の背景には、昨年の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件後、中国空軍機の日本領空接近が急増し、その傾向が変わっていないことがある。今年に入り、中国軍機が防空識別圏を越えて日中中間線付近まで侵入してくるケースも目立つ。
3月には中国の情報収集機などが尖閣諸島周辺の日本領空約50キロまで接近した。8月には中国戦闘機が東シナ海の警戒監視活動を行っている海上自衛隊の情報収集機を追尾し、活動を妨害する意図をうかがわせた。中国の手は一段と尖閣近くに伸びている。
日本は在日米空軍の協力も得て制空権を確保しているが、日中の航空戦力のバランスはこの2、3年で中国が量的に優位に立ったといわれる。那覇基地の部隊増強や与那国への移動レーダー配備など防空能力を高めるのは当然だ。
同じく喫緊の課題は、空自の次期主力戦闘機の選定と導入だ。現在の主力であるF15は第4世代と呼ばれ、米空軍では旧式機となりつつある。一方、中国はレーダーに捕捉されにくいステルス性を持った第5世代機を開発中で、10年以内に実戦配備する可能性がある。中国が最先端機をそろえれば制空権の確保は困難だ。
日本側は第4世代機の改修などでつないできた。国を取り巻く安全保障環境が悪化しているにもかかわらず、歴代政権が防衛費を9年連続で削減したためだ。力の空白は日本を危うくする。
武器輸出三原則を見直さなかったことも、欧米諸国による第5世代機の共同開発から取り残される結果につながった。安全保障政策の転換と必要な抑止力を維持する予算の確保が不可欠である。