哨戒艦撃沈 「北の攻撃」漂流脱北者、日韓当局に証言
【ソウル=加藤達也】
石川県・能登半島沖で先月保護され、今月4日に韓国に移送された脱北者9人のうち複数が、日韓当局の事情聴取の際、昨年の韓国哨戒艦撃沈事件について「北朝鮮の攻撃と思う」としたうえで、金正日総書記の三男、正恩氏の業績作りが目的だったとの認識を示していることが14日、分かった。外交筋が明らかにした。証言者には北朝鮮の最高人民会議議長などを務めた白南雲氏(故人)の孫とされる男性も含まれている。
外交筋によると日韓当局は脱北者に対し集団面接形式で聴取を実施。このうち白元議長の孫とされる男性らへの聴取で哨戒艦撃沈事件について聞いたところ、「北朝鮮が実行したものと思う」との回答を得た。脱北者はまた「北朝鮮のでたらめな報道は見るに堪えない」と非難。「(正恩氏を)世界的に知らしめるためと聞いている」と述べた。こうした見解は同席した脱北者も同様だった。
また、昨年11月の韓国・延(ヨン)坪(ピョン)島砲撃についても「明らかに北朝鮮に非がある」と述べ、やはり「正恩氏の軍事・政治的名声を高める目的だ」と話したという。
こうした判断を下す根拠となったのは「韓国のニュース放送」。脱北者は「漁で数日先の天候を知る必要があり、韓国の天気予報を聞くために(韓国の放送が聴けるよう)改良したラジオを持っていた」と証言した。日韓の治安当局は脱北者が韓国のニュースで世界情勢を把握していることから、状況を冷静に分析し、行動することができる北朝鮮住民が他にも相当数いるものとみて関心を寄せる。
正恩氏をめぐってはまた、その指揮下に秘密警察の国家安全保衛部や社会安全部を監察・統制する「朝鮮人民軍内務軍」を編成。「クリーンな社会の創出」を唱え、内務軍傘下の「爆風軍団」などの特殊治安機関が新たな勢力として台頭しつつあるとの認識も広がっているという。