相互防衛を強める好機に。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【主張】空中給油覚書





日米の相互運用性を強化する当然の措置として評価したい。

 日米が共同訓練などの際に航空自衛隊から米軍機へ空中給油を可能にする覚書を結び、米軍からの一方通行だった空中給油が初めて日米双方向に改善されたことだ。

 戦闘機以外に爆撃機や空中警戒管制機(AWACS)への給油も可能となる。重要なことは日米同盟の空洞化を食い止めて抑止の実効性を高めることだ。野田佳彦政権は今回に限らず、米軍普天間飛行場移設や集団的自衛権をめぐる憲法解釈の是正などにも全力を挙げてほしい。

 これまで日米共同訓練では米軍機が自衛隊機に空中給油してきたが、自衛隊から米軍機に行われたことはなかった。

 空自の空中給油機KC767が平成20年、初めて愛知県小牧基地に配備され、4機運用体制が整った昨年10月、両国が互いに燃料などを融通しあう日米物品役務相互提供協定(ACSA)に基づいて覚書が結ばれたという。

 同盟の相互性を高める点で一歩前進であり、米軍も中国の接近阻止戦略に対抗する抑止力を確保する上で、空中給油の双方向化を歓迎している。覚書の趣旨は、本紙が9月22日付朝刊で提起した日米安保条約の再改定にもふさわしい方向といえよう。

 その半面、気にかかるのは政府が運用上、双方向給油を共同訓練に限定しようとしていることだ。ACSAは訓練以外に周辺事態や武力攻撃事態にも適用される。同盟が問われるのも緊急時の対応である。恣意(しい)的に運用を規制するのは、国の安全を守る上で実際の役に立たないからだ。

 覚書自体についても「米軍の作戦運用に拡大適用されると、集団的自衛権行使につながる」と警戒する声が一部にあるが、それは当たらない。藤村修官房長官も「そのレベルの話ではない」と語った。ただ、この問題を曖昧なままにする対応は疑問だ。むしろ、今回の合意を「集団的自衛権は行使できない」とする憲法解釈を正す機会としてほしかった。

 7日、訓練中の空自戦闘機の燃料タンクなどが落下する事故が起きた。事故防止と安全管理の徹底を期すことはいうまでもない。同時に、政府には同盟の役割や共同防衛の意義についても国民にその都度明確に説明し、説得していく誠実な姿勢が欠かせない。