【都道府県 伝統の教え】神奈川県
郷土史に力を入れる神奈川県。県立高校にも独自教科「郷土史」が存在する。地元の祭りに合わせ小学校ではさまざまな参加協力行事がある。七夕祭りに合わせた短冊作り、提灯祭りに合わせた提灯作り…といった具合だが、最も特筆すべきひとつが小田原市教委が平成10年から市内25小学校の全4年生の児童を対象に続けている「尊徳学習」だろう。
江戸時代の農村改革の指導者で、逆境を努力で切り開き、献身的に働き、多くの農村救済に尽力した二宮尊徳は小田原市の栢山(かやま)に生まれた。
毎年10月に始まる尊徳学習では市独自の副教材「二宮金次郎物語」を使った授業や調べ学習が行われる。市内には尊徳を祀(まつ)った報徳神社に報徳博物館があり、市の施設としても市尊徳記念館など尊徳ゆかりの施設も多い。児童は授業や調べ学習などを通じて郷土の偉人の生き様や業績について“洗礼”を受け、それを紙にまとめていく。毎年全員分が記念館に展示されている。
戦後、日教組などによって道徳教育は目の敵にされ、かつて校庭に当たり前にあった二宮尊徳像は全国的に廃れてしまったが、小田原市では郷土の偉人として尊徳の思想に触れる教育が地道に続いている。