【主張】ユーロ危機
ギリシャ財政危機に端を発した世界金融市場の混乱は、同国債務不履行(デフォルト)への懸念からユーロが急落し、同国国債を大量に抱える欧州大手銀行が経営危機に陥る事態に発展した。
金融機関が破綻すれば、その影響は信用不安の連鎖という形で欧州から世界に拡大しかねない。にもかかわらず、震源地、欧州の対応は遅すぎる。一致結束し、責任をもって危機封じ込めに全力を挙げてもらいたい。
危機を深刻化させたのは、ユーロ圏諸国から資金支援を受ける条件とされた2012年までの財政再建目標の達成は困難、とギリシャが表明したことだ。これを受け、3日のユーロ圏の財務相会合が、3カ月ごとに分割して行う同国支援融資の延期を決定した。
このため、ギリシャ国債を保有する金融機関の株が暴落し、仏・ベルギー系銀行の「デクシア」には両国政府が公的資金注入を検討するという状況になっている。
危機の発端は、財政赤字を過少計上していたギリシャの粉飾決算にある。同国には最大の責任があり、ユーロ圏の一員として財政再建を実行する義務がある。
ドイツなど他のユーロ加盟諸国の責務も重い。ギリシャを資金支援する「欧州金融安定化基金(EFSF)」の機能強化に万全を期し、7月にユーロ圏17カ国首脳が合意した基金拡充策を各国議会が承認する手続きを終えねばならない。スロバキアなど議会の反対から手続きが遅れている一部の国の承認は、とりわけ急がれる。
先進国と新興国でつくる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議も先月、「力強い協調」を決定している。あくまで欧州が自らの責任を全うすることが先決だとはいえ、欧州金融安定化基金が資金調達のために発行する債券の追加購入などについては、日本も検討する必要が出てこよう。
ただし、日本が最優先すべきは産業空洞化への対策だ。東日本大震災で落ち込んだ生産や輸出が改善しつつあるとはいえ、ユーロ危機や米経済失速に伴う超円高の影響で日本経済も低迷している。
政府には中小企業の資金繰り支援などとともに、電力不足など6重苦といわれる企業の足かせをはずし、景気回復を持続させる責任がある。6日から政策決定会合を開く日銀も、追加の金融緩和をためらってはならない。