十津川出身の自衛官、奔走 台風12号豪雨
http://www.sankei-kansai.com/2011/09/29/20110929-058198.php
“救世主”は同級生だった―。台風12号による豪雨と土砂崩れで、道路と通信が遮断されて「陸の孤島」と化した奈良県十津川村への進入ルートを切り開き、今月5日、村に一番乗りした自衛官がいる。笹内茂樹陸曹長(46)。村の出身者だ。自衛隊の登場に沸いた村役場には、地元中学で出席番号が隣だった村議の小西規夫さん(46)がいた。「よう来てくれたのぉ」。災害現場で劇的な再会を果たした2人は、立場は違うが村の復旧・復興に尽くしている。
村立小原中学校(同村小原)で同じクラスだった2人は、剣道部でも一緒だった。小西さんが思い出す当時の笹内さんは、自転車で山道をノンストップのまま駆け上がっていく姿。
「あのときから『レンジャー』やった」
笹内さんの所属は陸上自衛隊大久保駐屯地(京都府宇治市)の第7施設群偵察班。3日深夜に十津川村野尻で村営住宅2棟が濁流に流されるなどの被害報告を受け、4日午前2時、奈良県からの災害派遣要請に先立ち偵察班の班長として同僚と2人で村に向かった。
村に通じる主要道のすべてが、大規模な土砂崩れで通行不能となる中、「あっこしかない」と浮かんだのが、少年時代に自転車で走り抜けた村道だった。
道をふさぐ何カ所もの倒木をノコギリで切断し、落石をどけ、出発から約30時間かけて村役場に到着した。関係機関に自ら切り開いたルートを伝え、自衛隊などの救援車両が後に続くきっかけをつくった。
笹内さんは、今も村に残り、行方不明者の捜索や孤立集落の救援活動のバックアップを続けている。4月に村議になったばかりの小西さんは、林業再生など村の将来を見据えた復興に取り組む日々だ。
十津川村は、死者5人、行方不明者7人という被害に見舞われ、川がせき止められてできた土砂崩れダムへの警戒も続く。校庭が救援・救助のヘリポートになっている母校の小原中で、笹内さんは「行方不明者を家に帰す」、小西さんは「にぎやかな村を再生させる」と誓い合った。
生まれ育った奈良県十津川村で救援活動を行う陸上自衛隊の笹内茂樹さん (川西健士郎撮影)