やるべきことはやった? | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【from Editor】




退陣の意向表明から約3カ月もの間、首相の座に居座り続けた菅直人氏。野田佳彦新政権がスタートとした今も、菅氏が残した「負の遺産」はくすぶり続けているようだ。

 その最たるものが、総辞職の1日前の8月29日に朝鮮学校の高校無償化適用の審査手続きを当時の高木義明文部科学相に「再開してほしい」と指示したことであろう。無償化手続きは北朝鮮による韓国・延坪(ヨンピョン)島砲撃で停止していたのだが、「昨年11月以前の状況に戻った」(菅氏)というのが再開の理由らしい。これに失望したのが拉致被害者の家族だ。「拉致問題を解決する気がなかった表れだ」と反発を強めているという。

 この問題について野田政権は「反対も賛成も表明しない」(藤村修官房長官)と、文科省の対応を見守る考えのようだ。この対応ぶりからは、野田政権も退陣直前に唐突に出てきた「菅指示」をどう扱っていいのか戸惑っている様子がうかがえる。

 菅氏の「負の遺産」はこれだけではない。菅氏は5月の参院予算委員会で、東日本大震災の被災者向けの仮設住宅建設に関して「お盆までに内閣の責任ですべての希望者が入れるようにする。必ずやらせる」と明言。しかし、7月になると今度は目標達成は困難だと認め、あっさりと約束を反故(ほご)にした。

 「偽らざる率直な感想は、与えられた厳しい環境のもとで『やるべきことはやった』という思いです。楽観的な性格かもしれませんが、一定の達成感を感じているところです」。不便な避難所生活を余儀なくされている6千人を超える被災者は、退陣会見で菅氏が晴れやかに言い切ったこの言葉をどんな思いで聞いていただろうか。

その菅氏も今や一兵卒。だが、再び“脚光”を浴びることになった。菅氏の資金管理団体「草志会」が、日本人拉致事件容疑者の長男が所属する「市民の党」の派生団体に6250万円を献金していた問題である。

 5日付本紙朝刊によれば、神奈川県の住民らが政治資金規正法違反罪(虚偽記載)で、菅氏に対する告発状を東京地検特捜部に提出し、受理されていたという。記事には「特捜部は立件の可否を判断するため捜査に着手する。菅前首相の献金問題が刑事事件に発展する可能性が出てきた」とある。

 退陣後は「お遍路に」とのん気に語っていた菅氏だが、実現できるだろうか。

                                (副編集長 黒沢通)