【主張】朝鮮学校無償化
菅直人首相が29日に、朝鮮学校への高校無償化適用手続きを再開するよう指示した。
退陣間際に党内議論も経ず重要案件を決めるのは、無責任の一語に尽きる。新政権の手を縛りかねず非常識極まりない。北朝鮮や朝鮮総連の強い影響下にある朝鮮学校の無償化を強行することは認められない。野田佳彦新政権は直ちに手続きを止めるべきだ。
無償化手続きは昨年11月、北朝鮮による韓国・延坪(ヨンピョン)島への砲撃を受け停止された。再開は、菅氏が「事態が昨年11月以前の状態に戻った」と判断したからだという。その判断自体、北に対する認識が甘く、間違っている。
北朝鮮は南北対話のほか、ロシアとの首脳会談で金正日総書記が6カ国協議への復帰に言及するなどの動きを見せてはいる。だが、延坪島砲撃について韓国への謝罪すら行っていない。対話の動きといっても、国際的な批判を浴びた北が友好を演出するのは過去、繰り返されてきた。
北の暴挙は、韓国砲撃に限らない。過去には日本人拉致事件や大韓航空機爆破事件などテロを引き起こした。最近も核実験を強行し韓国哨戒艦を撃沈した。
朝鮮学校の教科書では故金日成主席、金総書記父子をたたえる記述のほか、日本人拉致事件を認めず、大韓航空機事件を「韓国当局のでっちあげ」とするなど、反日的で国際常識とかけ離れた記述が国会でも明らかにされてきた。学校運営に関しても、教員人事などに朝鮮総連の強い影響が及んでいることが証言されている。
にもかかわらず、菅政権では、無償化適用ありきで検討が進められ、「教育内容を不問」とする文部科学省の基準がつくられた。
無償化手続きは再開されれば適用まで2~3カ月かかるというが、学校施設などについて形式的な審査にとどまる。文科省は経理の透明化を求めるなどとしてきたが、具体策は示されていない。
中野寛成・拉致問題担当相も審査再開には強く反対している。菅首相は、北や拉致事件容疑者と関係の深い政治団体への巨額献金問題を抱えながら、それに関し説明責任を全く果たしていない。拉致被害者の家族会が再開に抗議する声明を出したのは当然だろう。
今回の指示は、拉致問題などで北に誤ったメッセージを発することを意味し、禍根を残す。