「脱原発」と日本経済。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【金曜討論】

「脱原発」と日本経済 東谷暁氏、伊豆村房一氏





福島第1原発の事故で放射能への不安感が広がる中、菅直人首相が唐突に打ち出した「脱原発」に対し、電力の安定供給やコスト面で日本経済への打撃を不安視する声などが出ている。「エネルギーの安全保障、自立の観点から『脱原発』は得策ではない」とするジャーナリストの東谷暁氏と、「太陽光など再生可能なエネルギーに切り替えることで新たなビジネスチャンスが生まれる」というジャーナリストの伊豆村房一氏に聞いた。(喜多由浩)

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 ≪東谷暁氏≫


自立に必要なエネルギー


 ●冷静な議論がない

 --「脱原発」を掲げることが流行のようになっているが

 「福島原発の事故でショックを受けたあまり、恐怖感から冷静な議論ができないでいる。従来、原発推進を叫んできた人たちさえ突然、意見を変えているが、その姿が『現在の日本の弱さ』を示しているように思えてならない。何が日本の国益にかない、プラスになるのか。慎重に議論すべきだ」

 --「脱原発」はマイナスか

 「原発問題は、単に経済やコストの問題ではない。日本が原発に乗り出した経緯を振り返れば、それがよく分かるだろう。資源が少なく、エネルギー自給率が極めて低い日本にとって、エネルギーの安全保障、自立を確保するには、原発に乗り出すしかなかった。しかも、原発を維持する技術を日本が保持していることが、『潜在的な抑止力』になっていることを見逃してはならない。原発は軍事的安全保障の面でも日本の独立に、大きな役割を果たしている。今の危機を何としてでも乗り越え、事故をしっかりと検証し、その経験を日本の資産にすべきだ」

●電力料金が上がる

 --ドイツやイタリアは「脱原発」を宣言したが

 「ドイツやイタリアの電力料金は圧倒的に高い。電力を他国から買えばコストが上がるのは当たりまえの話だ。『脱原発』を打ち出しているのは一部の国にすぎず、世界的な趨勢(すうせい)はむしろ原発拡大にある。また今回の事故にからめて、電力の自由化や発電・送電の分離などを叫ぶ向きがあるが、これもマイナスにしかならないだろう。自由化などを進めたドイツの場合、寡占化が進み5年間で7割も電気料金が上がった。電力の安定供給の面でも不安が大きい。そうなれば日本の企業はいっせいに海外へと生産拠点を移すだろう」

 --今夏の状況をみて、「原発なしでもやれるのではないか」と指摘する声もある

 「現在の状況は、企業や家庭に15%程度の節電を呼び掛け、大口に対しては使用制限まで実施して、“どうにかこうにか”うまくいっているにすぎない。電力の需要は、季節や時間帯によって大きく変化する上、ためておくことができない性質を持っている。それを微妙なコントロールで、何とか安定的な電力供給を保ってきたのだ。これを『常態』だと誤解してはならない」

 --退陣を表明した菅直人首相に対しては?

 「(原発事故の対応は)『他の首相であっても結果は同じだった』とは決して思わない。自分の延命のために、場当たり的な対応を繰り返してきたからだ。価値観、倫理観を持たない政治家は、その国を虚弱にしてしまう」




≪伊豆村房一氏≫


新技術開発に全力挙げよ


 --なぜ「脱原発」に賛成か

 「1979年の米スリーマイル島や、86年のソ連チェルノブイリの事故が起きたときも、『日本ではこうした事故は起きない』と信じていた人は多かっただろう。ところが今回、自然災害という形で、“地震大国・日本”の致命的な弱点を突かれてしまった。しかも、その被害はあまりにも甚大だ。放射能というものが極めて長い期間に及んで人体に被害を及ぼすこと、また、使用済み燃料の処理や原発の廃炉にかかる時間やコストなどを考えた場合、今後、段階的な『脱原発』に向かわざるを得ないだろう」

 ○安定供給は必要

 --「脱原発」で電力供給に不安はないか。日本経済に深刻な打撃はないのか

 「もちろん、電力の安定的な供給は日本経済にとって極めて重要な問題であり、すぐに『脱原発』はできないだろう。ただ、現実に、地域の信頼性は失われてしまっており、定期点検中や、今後、点検に入る原発の再稼働は相当に難しい。だから、『省エネ』『蓄電』分野への資源の集中や、太陽光、風力、地熱など再生可能エネルギーの分野で、新たな技術開発に全力を挙げるべきだ。それが、ひいては日本経済の復興・再生や新たな雇用の創出にもつながる」

○「原子力村」に不信

 --太陽光エネルギーなどはコストが高い、といわれている

 「1970年代のオイルショックのときも、太陽光や風力、地熱などの活用が叫ばれ、当時、太陽光のパネルなどで日本の技術は世界トップクラスだった。ところがその後、国が『原子力推進』の方向へシフトしたために、せっかくの技術開発が滞ってしまった経緯がある。今後、日本が全力で取り組んでいけば、コストも下がってゆくだろうし、この分野で再び世界のトップランナーになれば、日本経済の大きな武器になる」

 --菅首相が打ち出した「脱原発」政策は唐突でなかったか

 「場当たり対応があまりにも多すぎた。エネルギー政策という、国家の根幹にかかわる大方針を変えるのであれば、もっと慎重に議論を重ねるべきだ。(菅首相は)結局、駆け引きだけの“政治屋”にすぎなかったのだろう」

 「ただ、国の原子力政策を見た場合、反省すべき点も多い。これまで、政官財学にメディアも加わって、『原発推進』を誘導するあまり、その危険性についてはあまり言及してこなかったのではないか。『原子力村』の隠蔽(いんぺい)体質があり、地域住民への情報開示も十分ではなかった。『何となくおかしいのでないか』と皆が思いつつ、目をつぶってきたことが、今回の事故で一気に明るみに出たということだろう」

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草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員奮励努力セヨ。 

                【プロフィル】東谷暁

 ひがしたに・さとし ジャーナリスト。昭和28年、山形県生まれ。58歳。早稲田大学政経学部卒。ビジネス誌、論壇誌の編集長などを経てフリーに。経済問題を主に、月刊「正論」などで活発な文筆活動を行っている。主な著書に「間違いだらけのTPP 日本は食い物にされる」など。

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               【プロフィル】伊豆村房一

 いずむら・ふさかず ジャーナリスト。昭和16年、東京都生まれ。70歳。慶応大学経済学部卒。東洋経済新報社に入り、週刊東洋経済副編集長、ニューヨーク初代駐在代表、取締役編集局長などを歴任。現在はフリー。主な著書に「世界経済30分でまるわかり2007年版」(共著)など。















































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