【主張】自民党国家戦略。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110724/plc11072403500001-n1.htm
自民党がまとめた中長期の国家戦略に関する報告書で、今後のエネルギー政策に関して「安全強化策を施した上での既存原発の稼働維持」との方針を明確に示した点は率直に評価したい。
報告書は東日本大震災によってエネルギーをめぐる状況が一変したことを認め、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを「新たな柱の一つ」と位置付けた。だが、「原発の発電量を直ちにカバーすることは極めて困難」として、安易な「脱原発」路線と一線を画したのは現実的といえる。
福島第1原発の事故によって原発の安全性への信頼は大きく揺らぎ、自民党も従来のように原発推進を唱えるのは難しくなった。だが、菅直人首相の下での再稼働凍結などが電力危機を招き、産業空洞化に拍車をかけている。
今回の再稼働方針は、国民生活や経済活動に死活的なエネルギー政策で、責任政党の立場を強調し、現政権に代わる受け皿を示そうとしたものだ。
外交・安全保障政策で、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則について、核兵器を積んだ米艦船の寄港を容認する「2・5原則」に初めて踏み込んだ。画期的な判断である。
日本の安全を米国の拡大抑止(核の傘)に委ねている以上、中国や北朝鮮の核増強の現状をみれば、非核三原則の見直しは避けられないからだ。集団的自衛権の「行使容認」とともに、日米同盟の実効性を高めていこうとする姿勢を支持したい。
「領土主権の護持」も掲げた。非常事態に国が迅速に対応する法制度を憲法を含めて整備することも打ち出した。これらも、民主党政権では実現が困難なものだ。
「保守」としての自民党らしさも教育政策を中心に織り込んだ。親の過保護や無関心、「公」を軽視する傾向が教育を危機的状況に陥れていると指摘し、「大震災で全国民が再認識した家族・家庭の重視」を改革の柱に据えた。
保守カラーは成長戦略にもにじみ出ている。欧米の市場原理主義とは異なる「人間と自然の調和」を理念とし、「日本固有の文化や伝統を重んじる」社会を目指すとした。国家のありようを示した意味は大きい。
日本をどうすべきか。次期衆院選に向けた基本政策を自民、民主両党は競い合わねばなるまい。