【話の肖像画】元防衛相・小池百合子
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110705/dst11070503190002-n1.htm
■菅さんは危機管理から一番遠い人
東日本大震災の発生から4カ月近くがたつ。だが、福島第1原発事故の収束は遠い。ひとつは菅直人首相の事故直後の対応のまずさが響いているからだろう。国のリーダーのあり方から日本のエネルギーの将来まで、防衛相や環境相を務めた女性政治家はどう考える。
文 木村良一
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--お約束した通り、質問事項をメールで送信しておきました。事故直後の菅首相の行動の是非が質問の中心になっています
小池 つまらない。
--えっ。どの辺がですか
小池 いまさら菅さんの悪口を言ってもしようがない。ダメなリーダーであるのは分かり切っている。むしろ日本の国のあるべき姿を語った方が、建設的だと思います。
--菅首相の事故後の対応がリーダーとして適切だったかどうかを検証しておく必要はあると思いますが
小池 分かりました。
--まず事故直後、菅首相のヘリ視察が原発のベント(排気)作業を妨げ、水素爆発が起きたという見方があります
小池 菅さんの一連の行動は全てひっくるめて検証すべきでしょう。国のリーダーにとって危機管理とは何か。災害が起きたときに真っ先にどのボタンを押さなければならないのか。首相が知っていて当然なのですが、それが違った。そこが日本の悲劇だと思う。ある意味で戦後日本の平和ボケで、国民も危機管理ができるリーダー像について真剣に考えてこなかったのでしょう。
--災害や原発事故に沿って言うと、どうなります
小池 たとえばアメリカではAという町が壊滅状態になったときに隣のB町がバックアップする。逆にB町が壊滅したときはA町やC町がフォローする。
--広い意味でのフェイルセーフ(多重安全構造)ですね
小池 はい。私はこのアメリカの例を学びました。15年ほど前、原発事故に関してそうした危機管理マニュアルが日本にあるのかどうかを通産省(現・経産省)に尋ねたことがあった。国会の場か、それとも勉強会の場かは忘れましたが、その答えは「ありません」でした。「ある」と答えるのは「安全」が建前である以上、都合が悪かったのでしょう。阪神大震災の直後で危機管理意識が非常に高まっていた時期でしたのに…。
--菅首相の場合はどうでしょうか
小池 阪神大震災時の村山政権も含め、危機管理や自衛隊から一番遠いところにいる人が日本のリーダーになると、自然は災害によってそれを試すかのように思えます。
--災害や事故だけでなく、防衛でも同じですか
小池 日本には災いを考えること自体がよろしくないという考え方がある。防衛面でも、災いに備えることが災いを呼び込むといういわゆる巻き込まれ論がずっとあった。
--今回の原発事故で印象に残るのは
小池 一番ショックだったのは原発の全ての電源が落ちた際、内部に進入してのぞき込めるロボットが日本になかったことです。
--そうですね
小池 最初に役に立ったのはアメリカの無人偵察機。その後は自動掃除機「ルンバ」で知られるアイロボット社のロボットでした。これもアメリカ製です。日本はロボット大国のはずなのに使えるロボットがない。日本のロボットはバイオリンを弾いたり、お年寄りをお風呂に入れたりできても、いざというときに日本を守れない。
--どうしてそうなのですか
小池 「軍事転用の可能性がある」と非難されるのを恐れて自粛してしまうからでしょう。民間の日本のロボット技術は素晴らしいが、有事に役立つようなロボットは大学院でホコリをかぶっている。
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【プロフィル】小池百合子
こいけ・ゆりこ 昭和27年7月15日、兵庫県芦屋市生まれ。自民党総務会長。関西学院大を中退し、エジプトのカイロ大を卒業する。テレビ東京のキャスターを経て平成4年の参院選で初当選、翌年から衆院議員。20年9月には女性として初めて自民党総裁選に出馬した。
