【日々是世界 国際情勢分析】
中国人民解放軍は今月初旬、海軍艦艇11隻が沖縄本島と宮古島の間の公海を通過するに際し、ついに西太平洋での演習定例化を公言した。この宣言は重大な意味を含んでおり、小笠原諸島から米軍の拠点・グアムを結ぶ「第2列島線」に勢力範囲を及ぼす戦略的意思を示す。中国が「核心的利益」とする南シナ海での対立はその序章で、今回の定例化公言は、アジア関与を深める米国への牽制(けんせい)だ。
「海洋権益をめぐる争いはますます高まっている。主権を持つ海域での監視を強化する」
9日付の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、軍と密接な関係にある中国国家海洋局の劉賜貴局長は同局傘下のメディアなどでこう強調した。
中国の各種資料を分析してきた軍事専門家は、中国の戦略について「まず最初に南シナ海、インド洋、西太平洋での作戦能力の確保、2点目が米軍に対する抑止力(接近拒否戦略)の確保」と明言する。スリランカやパキスタンなどで中国が港湾施設を整備する「真珠の首飾り」戦略や西太平洋での演習定例化、西太平洋の沖ノ鳥島周辺への海洋調査船派遣はその一環だ。
米国、中国を含め各国が南シナ海で演習を実施、牽制し合っているが、特に中国は、上陸作戦や低空爆撃など多岐にわたる訓練を実施。南シナ海で「海洋石油空母」と呼ばれる最新式の資源探査装置を秋には稼働させるほか、中国研究者によると、5月から南沙諸島の環礁で新しい海軍施設の建造を始めた。改修中で近く進水するとみられる練習空母「ワリヤーグ」は、南シナ海を管轄する南海艦隊に配備される。
これに対し、潜在的に反中感情が強いベトナムは最近、カムラン湾で米露の艦艇利用を視野に入れた開発をもくろむほか、実効支配する南沙諸島の島で軍事施設の強化を進める動きに出たようだ。来月には米軍との共同演習が予定される。インドも4月にフィリピン海で米軍と演習を実施した。
中越間で非難の応酬とせめぎ合いが続くなか、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は今月21日、「交渉に加え、政治、経済、軍事的手段も準備し、ベトナムの野心を抑えるべきだ」と訴える社説を掲載した。国営新華社通信(電子版)も14日、「砲弾を数発撃ち込み中国を屈服させられる時代は終わっている」と警告した。
米国はベトナム、フィリピンと戦略的な連携を強化、南シナ海での米軍の優位性を維持したい考えだが、現実には領有権紛争そのものに介入することには慎重姿勢だ。
中国も米国の曖昧な思惑を見透かしている。東南アジア諸国連合(ASEAN)の足並みがそろわず、米国の東アジア首脳会議への正式参加を前に、「南シナ海での実効支配をできる限り進めておきたい構え」(専門家)だ。
12日、ベトナムの首都ハノイで反中のデモ行進をする人々 (AP)