【都道府県 伝統の教え】滋賀県
近江国(おうみのくに)、滋賀県は鎌倉時代から昭和にかけ商才に秀でた「近江商人」を輩出した。天秤(てんびん)棒をかつぎ売り歩く行商にはじまり、各地に支店を構える大商人となり活躍した近江商人も多い。
「三方よし」とは、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という近江商人の心構え。ホームページで近江商人の経営理念などを紹介している財団法人滋賀県産業支援プラザなどによると、見知らぬ土地で商売するには信頼を得ることがなによりも肝心。自分の利益や客の満足はもちろん、社会的な信用や貢献の重要さを示した言葉だという。
ほかにも「陰徳善事(いんとくぜんじ)」(人知れず人の為になることをする)など近江商人の心得を伝える言葉は多く、理念は受け継がれている。
近江八幡市にある県立八幡商業高校(通称「八商(はっしょう)」)は、明治19年開校の県商業学校からの伝統があり、伊藤忠商事など総合商社の礎を築いた伊藤忠兵衛やワコール創業者の塚本幸一ら錚々(そうそう)たる人材を輩出。
メンソレータムで知られる近江兄弟社の創立に携わった建築家、ウィルアム・メレル・ヴォーリズは八商の英語教師を務めたほか、いまも使われている校舎を設計した。現在も同校では近江商人の心を学ぶ課題研究授業や語学教育が熱心に行われている。