ＴＨＥ ＣＯＶＥＲ ＮＩＰＰＯＮ

【Ｒｏｏｍ’ｓ】Ｍａｄｅ　ｉｎ　Ｊａｐａｎ　世界に発信



≪伝統の技・文化　新たな感性融合≫

　東京都・六本木にある商業施設「東京ミッドタウン」。おしゃれな店があまた並ぶ中で、特に日本製にこだわったライフスタイルショップが存在する。全国各地の地域文化に根付いた商品を発信していく「ＴＨＥ　ＣＯＶＥＲ　ＮＩＰＰＯＮ」（ジカバー・ニッポン）。東日本大震災後、「日本」という２文字を強く意識する昨今。意義あるショップなのかもしれない。

　■地域の産業促進に貢献

　東京ミッドタウンのガレリア３階にある「ＴＨＥ　ＣＯＶＥＲ　ＮＩＰＰＯＮ」。長い小窓から商品がのぞき、木のぬくもりを感じさせる大きな扉の向こうには、穏やかな空間が広がる。決して、主張はしない。

　「この店は、日本各地に埋もれている商品やモノ作りを発掘し、世界へ発信していく場として、４年前にオープンしました。伝統の技を受け継ぎつつ現代的に進化した魅力的な商品を紹介し、地域の産業促進に貢献していきたいと考えています」

　ショップを展開するメイド・イン・ジャパン・プロジェクト（東京・赤坂）の赤瀬浩成社長はこう説明する。驚かされるのは、商品の種類の多さ。日本各地の素材を生かした家具、照明、食器、文具、服飾のほか、コメや調味料などもそろえている。ここなら特に目的がない人が訪れても十分に楽しめそうだ。

取引先は、全国の約１００社。東日本大震災の被災地である岩手県や福島県の商品も並んでいた。伝統の鋳造技術を今に伝える「岩手　南部鉄器」。会津塗の伝統技法と美しさに新しい感性を融合させたブランド「福島　会津ＢＩＴＯＷＡ」。これらの工芸品は山間部で製作されており、震災で大きなダメージは受けなかったそうだが、「交通や物流などインフラが回復していないので材料が入手しにくい状況は続いています。港の近くにあった倉庫が流されたり、働いている職人さんの家族や親戚で被災した方もいます」と赤瀬社長。

　店内を見回すと、商品に付き物のパンフレットや説明書きの資料がほとんどない。案内をしてくれた笹木直さんと佐藤剛典さんは「できるだけ自分たちの言葉で丁寧に商品を伝えようという思いがあります」。ここにもジカバー・ニッポンのコンセプトが伝わってくる。

　ただ、モノを売るだけではない。モノづくりを通して日本の伝統や文化、暮らしを学び楽しむ講座「ニッポンブランド・マイスター講座」を開催している。例えば、染色や和紙の基礎、日本茶の楽しみ方などが勉強できる。笹木さんは「実技を伴わないので、会社員の方が自分の知識や教養を身につけるために気軽に受講する場合が多い」と説明する。

■次代のデザイナー支援

　ジカバー・ニッポンでは、地域のモノづくりの活性化に向けた活動も展開している。次世代を担うアーティストやデザイナーの発掘、支援を目的に毎年開かれている「Ｔｏｋｙｏ　Ｍｉｄｔｏｗｎ　Ａｗａｒｄ」（東京ミッドタウン主催）の受賞作の商品化に向け、全面的なサポートを実施。新たな才能と地域メーカーのコラボレーションで、ヒット作品を世に送り出そうという試みだ。

　例えば、２００８年に審査員特別賞を受賞し、昨年１月に発売された鈴木啓太さんデザインの「富士山（ふじやま）グラス」（千葉県九十九里町の菅原工芸硝子製造、３７７６円）。ビールやウイスキーなど注ぐ飲み物の色によって、さまざまな富士山の姿が現れるユニークなグラスは、職人が一つ一つ手作業で仕上げているという。

日本の美しい風土ではぐくまれた「Ｍａｄｅ　ｉｎ　Ｊａｐａｎ」製品にどこまでもこだわるジカバー・ニッポン。赤瀬社長は問いかける。「あなたは日本が好きですか？　生まれた町が大切ですか？」。産業の空洞化や人口の減少などで地方の文化が衰退しつつあるなか、「１０年後の日本のモノづくりのために行動したい」と意気込む。こうしたメッセージはいま、心に深く刻まれる。

　　　　　　　　　　　　　　（文：松本明子／撮影：伴龍二／ＳＡＮＫＥＩ　ＥＸＰＲＥＳＳ）

　　　　　　　　

ＴＨＥ　ＣＯＶＥＲ　ＮＩＰＰＯＮ

東京都港区赤坂９の７の３　東京ミッドタウン　ガレリア３Ｆ。午前１１時～午後９時。（電）０３・５４１３・０６５８

【Room's】畳敷きのスペースに置かれた、東京下町の職人が作った屏風「七彩箔本金松（ななさいはくほんきんまつ）」（１２万６０００円）と２人掛けソファ「鉄板」（岐阜県、４４万８０００円）＝東京・赤坂の「THE_COVER_NIPPON」（伴龍二撮影）