被災地を忘れていないか。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







【主張】復興構想会議



東日本大震災の復興計画を策定する政府の復興構想会議(議長・五百旗頭(いおきべ)真防衛大学校長)が中間的な論点整理をまとめた。6月末の第1次提言まで1カ月に迫ったが、いまだに総花的で、具体策を打ち出せないのはどうしたことか。

 菅直人政権は構想会議の提言を待って本格的な第2次補正予算を編成する方針だが、それでは何も手を打たないまま被災者を泣かし続けることにならないか。官僚OBら実務者を締め出した構想会議の「欠陥」も表面化しており、首相の統治力の欠如を露呈している。

 中間整理では、まちづくりや地域経済再生など5つの論点について委員の意見をまとめたが、問題は具体性を欠くことだ。

 土地利用規制や税制・金融面で優遇する「復興特区」の創設を明示したが、規制緩和の対象地域や分野などに踏み込まなかった。これでは具体的方向がみえない。

 被災地ではいまだに多くの被災者が不自由な避難所生活を強いられている。中間整理は「高台など安全な場所に移転」としたが、それ以前に仮設住宅の建設は遅れたままだ。

 最優先すべきは被災者支援であり、会議の議論にはそのスピード感がうかがえない。被災地のニーズをくみ取った復興の具体像をとりまとめなければならない。

議長以下15人の委員で構成する会議には被災3県の知事もいるが、さまざまな分野の専門家を集めたことで議論が拡散しがちとの批判もある。下部組織の検討会議との役割分担もあいまいだ。

 このままでは、抽象的な理念をちりばめただけで現実性を欠く提言とならないか心配だ。

 復興財源を確保するための増税は賛否両論が併記された。だが、大震災に直撃された日本経済は回復の兆しがみえない。こうした中での増税は、消費を含めて影響が深刻だ。経済を見通した大局的な観点での財源論議が必要だ。

 構想会議のモデルとなった「阪神・淡路復興委員会」が阪神大震災の復旧・復興に大きく貢献したのは、下河辺淳元国土事務次官を委員長に官僚を使いこなす体制を整えたからだ。それが実効性ある復興計画につながった。

 会議発足から1カ月半たった。いまだに会議に明確な方向性を与えられない菅首相の「政治主導」の惨状をみせつけている。