ベトナム探査船に実力行使の中国「二重基準」を露呈。
【シンガポール=青木伸行】
南沙(英語名・スプラトリー)諸島などの領有権が争われている南シナ海で、中国がベトナム探査船の調査用ケーブルを切断した事件は、領有権問題の2国間による「平和的解決」を呼びかけながら、その実は実力行使により力で各国を封じようとする、ダブルスタンダード(二重基準)ぶりを如実に示すものだ。
国営ベトナム通信などによると、26日に中国の妨害があった海域は海南島の南600キロ、ベトナム・ニャチャンの東方120キロ。ベトナム国営石油会社ペトロベトナムの石油・天然ガス開発鉱区だった。
同社の探査船が中国の監視船3隻に妨害、威嚇された末、調査用ケーブルが切断されたことについて、同社幹部は「ケーブルは水深30メートルのところにあり、これを切断するには機材が必要で、切断は用意周到に計画されたものだ」とみる。
ベトナム政府は「ベトナム海軍は主権、領海保全のために必要ないかなる行動もとる」(外務省報道官)と中国側を強く牽制(けんせい)。また、中国は領有権問題の「平和的解決」を呼びかけながらも、実際の行動は情勢をいっそう複雑なものにしていると批判している。
これに対し、中国外務省は「中国が管轄する海域での正常な海洋取り締まり活動だ。この海域でベトナムが石油・天然ガスの(探査)活動を行うことは、中国の権益を損なう」と、実力行使を正当化している。
両国はベトナムが今月、国会議員選挙を南シナ海の実効支配地域でも実施したことをめぐり対立していた。また、中国は3月に南沙諸島でフィリピンの石油探査船を妨害。アキノ大統領は今月23日、中国の梁光烈国防相とマニラで会談した際に「南シナ海の緊張が高まれば軍拡競争を招く」と牽制している。