【主張】国歌起立条例
卒業、入学式の国歌斉唱時に教職員に起立を義務づける条例の制定が大阪府で進んでいる。橋下徹知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」が条例案を開催中の定例府議会に提出する。
大阪府では、門出を祝う大切な行事で一部教師らが起立せず、国旗、国歌に敬意を示そうとしない異様な事態が多かった。
今春、府立高校では起立しない教師のいた学校が2割近くを占め、3年担任の半数以上が不起立という高校もあった。起立を促す県条例は全国でも例がないが、当たり前の教育を行うために当然といえる。条例制定を機に、厳正な対応を徹底してもらいたい。
条例案の対象は府内の公立学校教職員らで、国歌斉唱時の起立を義務づける。罰則はないが、橋下知事は不起立を繰り返した場合などの処分規定を定めた別の条例案を9月議会に提出する考えだ。
国旗掲揚、国歌斉唱をめぐっては反対する教職員との板挟みで平成11年に広島県で校長が自殺する痛ましい事件が起き、国旗国歌法が制定された。学習指導要領も国旗、国歌の指導を義務づけているが、起立せずに式を混乱させる教師らの例が後を絶たない。
東京都などは教育委員会通達で国歌斉唱時に国旗に向かって起立するよう校長が職務命令を出し、違反者を処分している。大阪府教委も起立を通知しているが、職務命令がきちんと出されず処分も徹底されないなど課題が多い。
条例化には反対や異論もある。神奈川県の黒岩祐治知事は「君が代、日の丸に敬意を払うのは日本人として当然」としつつ、「強制はしない」と慎重だ。だが、こうした意見は結果として不起立を容認することになっていないか。
国旗、国歌をめぐる訴訟では教職員に起立斉唱を求める職務命令は憲法の思想・良心の自由に反しないとの判例が定着している。それ以前に、門出となる教育的行事で一部教師だけが起立しない光景はどう映るか。教育上極めて悪質な行為といわざるを得ない。
橋下知事は「ルールを守らない教職員はいらない」という。当然だ。国旗、国歌をないがしろにする教師を許してきた悪弊を改める上で指導力を期待したい。
海外では国旗、国歌を尊重し敬意を払うのが常識だ。世界との交流が増す中で、国旗、国歌の大切さを学んでいきたい。