「空から落下してくる巨大な隕石(いんせき)に人々が逃げ惑う、映画のシーンに巻き込まれたような思いだった」。2001年9月11日、米国の繁栄を象徴する世界貿易センタービルがテロ攻撃で倒壊した。小紙のニューヨーク特派員は、現場付近の様子をこう書いている。
 ▼テロの首謀者は、国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者だった。オバマ米大統領は、そのビンラーディンを殺害したと、日本時間のきのう発表した。パキスタン国内の潜伏先を米軍の特殊部隊が急襲し、頭部を撃ち抜いたという。
 ▼一報を聞いた瞬間、映画のシーンのような銃撃戦を思い浮かべた。「芝居がかる」という言葉がある。米国内で持ち上がる事件や米国人が取る行動は、しばしば「映画がかる」とでも呼びたくなる。
 ▼サウジアラビアの大富豪の御曹司、ビンラーディンが、反米テロの黒幕として浮上してから、15年以上たつ。ゲーツ米国防長官は、2年前の記者会見で、「ビンラーディンをなぜ捕まえられないのか」と問われ、こう反論している。
 ▼「多くの人が映画を見過ぎのようだ。こうした連中を捕まえるのは本当に難しい」。それでも最後は、米国民がいかにも喜びそうな、ドラマチックな結末だ。ホワイトハウス前では、大勢の市民から歓声が上がった。今回の作戦の顛末(てんまつ)も、いずれハリウッドで映画化されるだろう。
 ▼そのなかでは当然、ビンラーディンが唱えてきた「聖戦(ジハード)」は、完全に否定される。そういえば、ハリウッドを漢字で聖林と書くのは誤訳だという。Hollywoodのhollyは、西洋ヒイラギのこと。「聖なる」を意味するholyと、取り違えたわけだ。
