【主張】菅首相
菅直人首相が東日本大震災への対応に加え、「財政再建への道筋」を自らの課題に掲げた。
18日の参院予算委員会の集中審議で、野党の退陣要求に反論する中で語った。震災対応の名目では足らず、さらに課題を増やして延命を図ろうというのだろうか。
菅内閣はすでに昨年6月、財政再建についての道筋を示す財政運営戦略を閣議決定している。2015年までに国・地方の基礎的財政収支の赤字の対国内総生産(GDP)比を10年度水準から半減させ、20年度までに黒字化するなどの内容だ。
この実現に首相が意欲を示すのは当たり前だが、いま最も緊急を要するのは大震災という国難を克服する最善かつ最速の復興プラン作りだ。
その財源をどう捻出するかも政治主導で考えるべきだ。復興構想会議の五百旗頭(いおきべ)真議長がいきなり提起するのは増税だろうか。
もっと民間資金の活用や復興国債の発行について与野党が論議すべきだろう。
財政法5条で原則禁止されている国債の日銀引き受けについては、特別の事由がある場合にはこの限りでない、とのただし書きがある。
そもそも、このただし書きに基づき、償還期限の到来した短期国債の借り換えについては日銀と財務省が合意のうえで毎年、約11兆円規模で引き受けられている。
日銀引き受けで通貨の信認が失われるのを危惧する向きもある。ただ、こうした問題をタブー視すべきではない。復興を日本再生への投資と考え、内外から民間資金を募ることも必要だ。これらを抜きにして、首相は「財政再建の道筋をつけるところまでやれれば政治家として本望だ」とまで強調しているが、真意を疑う。
まず、マニフェスト(政権公約)に並べたばらまき政策を撤回するのが先決だろう。
集中審議では、大震災や福島原発事故への菅政権の対応のまずさを野党側が厳しく指摘したが、首相は責任を認めず、開き直るような答弁が目立った。
首相が大震災発生翌日、福島第1原発の視察を行った点も重ねて批判され、首相は「初動が不十分だったとかいう指摘は当たっていない」と反論した。被災地対応の混乱なども含め、説得力を持った説明は聞かれなかった。