自然は情け容赦ない。3・11からまもなく1カ月がたとうというのに、今度は最大級の余震が東北を襲った。真夜中に悪夢を思い出されたであろう被災者のみなさんには、重ね重ねお見舞い申し上げる。
▼酸素吸入器が停電で止まり、亡くなった方もいる。電気がなければ、世の中真っ暗闇だ。電車は動かず、信号は消え、テレビは沈黙し、水道やガスも止まる。現代文明は電気で成り立ち、かなりの部分を原子力発電が担っている。
▼東京電力福島第1原発の厄災は、文字通り命をかけた現場の懸命の努力にかかわらず、終息する気配が見えない。韓国の首相は、隣国への通告なく放射性物質を含む汚水を放出した日本政府と東電の対応にいらだちを隠さず、「韓国ではなく、日本が無能だ」と言い放った。
▼小社の東京本社がある大手町では、原発事故が明るみに出た直後から外国人がクモの子を散らすようにいなくなった。一時は32カ国もの大使館が東京から逃げ出し、今でもドイツなどは戻っていない。的確な情報を伝えようとしない日本政府への不信感の表れといってもいい。
▼超弩級(ちょうどきゅう)の大地震と想定外の大津波、それに終わらぬ余震。自然の猛威の前に、人間はなすすべもないが、今回は「リーダー不在」という人災も加わり、事態をより混迷させている。トップが病気で陣頭指揮がとれないなら、すぐに交代するのが筋だろう。
▼もう一人、お辞めになるべき人がいる。抄子の代わりに民主党出身の西岡武夫参院議長がすでに言ってくれている。「今の状態で国政を担当するのは許されない」と。武士の情けで名前は挙げまい。死んでいった人々を悼み、この国の復興を願って再びお遍路に出てはいかがか。