【マスターズ】 前年覇者ミケルソン「尊敬している」
【オーガスタ(米ジョージア州)5日(日本時間6日)=米沢秀明】男子ゴルフの今季メジャー第1戦「マスターズ」(7日開幕)に出場する石川遼(19)=パナソニック=が訴えた東日本大震災復興支援のメッセージが世界中に広がっている。(夕刊フジ)
会場のオーガスタナショナルGCで行われた公式会見は想像以上の反響で、思わず目頭を熱くした米報道陣もいたほど。2月からの米遠征は不振だが、天性のパフォーマンス能力で開幕前に大仕事をこなした格好。前年覇者のフィル・ミケルソン(40)=米国=は5日の会見で「有望な若手はリョウ・イシカワ」と名前を挙げた。
昨年のマスターズは乳がんと闘病中の妻に優勝を送ったミケルソンの話題一色となった。自らのためでなく、被災地のために賞金を稼ぐ石川には、そのミケルソンも注目していた。
5日の会見で「若手の有望株の一人としてリョウ・イシカワの名前を挙げることができる。彼のことを尊敬しているし、何より礼儀正しい。非常にいいプレーヤーだ」と評した。
これに先立つ4日、オーガスタナショナルGCで行われた石川の公式会見。米各メディアや英BBCなどが石川のメッセージを世界に配信している。
「いやあ、感動したよ。マスターズの歴史の中ではさまざまな感動のシーンがあったが、その1ページに刻まれる会見だったんじゃないかな。少なくとも私が担当した会見では最も印象的な会見だったよ」
目に涙をためながらこう語ったのは、石川の司会を務めたロブ・ジョンストン氏だ。ジョンストン氏は地元の不動産会社社長を務めながら会見の司会をしているが、通訳を介してでも石川のメッセージ性のある言葉と立ち居振る舞いに驚いたという。
石川は会見の中で、今季賞金全額を被災地に寄付することを決めた心情を説明しながらゴルフによる復興支援を熱弁。「被災地で冷静に行動する日本人を見て、ボクは日本人であることを誇りに思った。スポーツの持っている力は無限。だからかならず影響を与える。これまで恵まれた生活をしてきた恩返しをしたい」などと語った。
「彼の言葉の力に圧倒されたよ。被災地を思う愛情と、災難がありながらゴルフに集中しようとする自分の思いがうまく表現されていた。あれだけのメッセージを伝えられる才能を持った若者は米スポーツ界にもあまりいないと思う」とジョンストン氏。
会見に出席した地元紙オーガスタ・クロニクルのスコット・マシュックス記者も石川の受け答えに思わず胸が熱くなったという。米ゴルフ界の若手にもリッキー・ファウラー(22)=米国=など明晰な発言をする選手がいるが、石川はさらに表現力に長けていると評している。
「落ち着いていて、大人としてしっかりとした発言だった。トップ選手としての社会貢献の責任に言及しているところは19歳とは思えない。特に感動したのは、『被災地とつながっている思いを持てば100%の力でプレーできる』と言ったセリフだ」
同紙は『日本の災害が10代選手の心を引き裂いている』と題して、5日付1面のマスターズ特集で石川、松山英樹(19)=東北福祉大=のほか、池田勇太(25)、藤田寛之(41)を大きく取り上げている。見出しは「スポーツの力を信じている。だから被災者に喜びが届くようにベストを尽くしたい」とする石川の発言。同紙は4日にも1面で石川を紹介しており、2日連続となっている。
被災地の国から来た日本人選手の活躍は今大会の大きな話題として注目を集めている。米各メディアが石川の会見を報道しているほか、英BBCも石川の発言を伝えている。マスターズ週間に沸くオーガスタの町中やホテルには、「日本をお見舞いします」などの看板も見かける。
マスターズ優勝は石川が少年時代から夢見た目標。しかし今季の米遠征は予選落ちなど不本意な結果が続いており、海外ではまだ思うように力を発揮できていない。被災地の思いを背負うことがもうひと皮むけるきっかけになるかもしれない。
石川が会見で発したメッセージには世界のメディアが注目。被災地へ今季獲得賞金全額寄付という、自ら課した重圧を背に、大舞台で3度目の正直を狙う(共同)