【主張】中学校教科書
来年春から内容が一新される中学校教科書の検定結果が発表された。これまで記述が少なかった竹島を地理の全教科書が取り上げるなど改善されたが、「日本固有の領土」とはっきり書いていない教科書がある。記述はまだ不十分だ。
検定や記述の内容が注目される社会科は、地理4社、歴史と公民各7社が検定合格した。
竹島は新しい学習指導要領の解説書で地理で教えることが明記されたため、ようやく全社が記述した。公民もほとんどの教科書が記述した。尖閣諸島も取り上げる教科書が増えたことは望ましい。
ただ教科書会社によって記述量や取り上げ方に差がある。育鵬社や自由社のように、竹島が日本の領土となった歴史的経緯や、国際法上の根拠なく韓国が不法占拠していることなどにかなりのスペースを割いた教科書がある。
一方、「韓国との間に主張に相違がある」としながら、韓国による不法占拠に言及しない教科書が多い。日本固有の領土であることと、不法に占拠されていることを明記しなければ、どこの国の領土か生徒にはわかりにくい。
竹島が日本の領土と明記されたことに韓国政府はいつものように抗議してきたが、松本剛明外相は1日、韓国の権哲賢駐日大使に対し、抗議は「受け入れられない」と反論した。当然である。
歴史教科書などでは、日本の過去を否定的に書く自虐的内容のものが相変わらずある。中国側が宣伝する南京事件の誇大な犠牲者数をあげる教科書はなくなったが、「南京大虐殺」という表現を使う教科書も残っている。
公民では、自衛隊の国際貢献や災害出動が高く評価されていることに触れる教科書がある一方で、「憲法違反」といった否定的見解をあえて強調する教科書がある。自衛隊に対する多くの国民の受け止め方とはズレがあり、バランスのとれた記述とは言い難い。
10年ぶりに改定された新学習指導要領では、国や郷土を愛する態度を育てることが重視され、教科書には各教科で伝統文化などを取り上げる工夫がみられる。授業でも公に尽くした人物の物語などを積極的に教えてもらいたい。
東日本大震災が起きて、懸命な被災者支援、被災地復旧・復興が進む。国民と国土を守る意味を普段の授業から学んでいきたい。