国難をはね返す力をみせよう。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







【主張】原発爆発事故 安全軽視が招く重大事態。




三陸沖を震源とした巨大地震は巨大津波を次々と起こし、日本列島の太平洋岸を襲った。最大級の国難といっていい。町や集落ごと壊滅した地区もある。

 だが、手をこまねいてはいられない。今こそ国を挙げて日本人が結束し、東日本大震災がもたらした危難をはね返し、救援と復興に力を合わせなければならない。

 とりわけ重大で早急に対処しなければならないのは12日夕、福島県の東電第1原発1号機で爆発と高レベルの放射線が検出された事故だ。深刻さは時とともに拡大、住民の避難指示範囲は同夜、第1原発の半径20キロに広げられた。


情報管理に手抜かり


 枝野幸男官房長官は「万全の対応をしているので落ち着いて行動を」と訴えたが、何が起きているかの説明は遅れた。情報管理に問題はなかったのか。国が情報を正確に把握し、迅速に周辺住民の安全確保を図ってはいなかった。

 同1号機では緊急炉心冷却装置(ECCS)という肝心の安全装置が働かなかったことが今回の事態を招いた。日本にとって安価で安定的な電力の供給源である原発の意味は大きい。しかも、安全性の信頼があってこそ地元は原発を受け入れているのに、基本的な安全手続きを軽視したことから起きたとすれば、言語道断だ。

原発は世界で使われ、安全性の信頼を根底から揺るがす今回の事態の影響は日本の問題にとどまらない。直ちに全国で原発の安全性の再検証を進めねばならない。

 一方、被災者の捜索・救助も急ぐ必要がある。まだ多くの人が被災地に取り残されている。72時間が生死を分ける。自衛隊、警察、消防、医療チームなどすべての力を結集し、迅速な救援活動で一人でも多くの命を救いたい。

 菅直人首相は被災地に派遣する自衛隊員を2万人規模から5万人規模に増やす方針を表明した。

 自己完結組織として大災害時にも対応できるのが自衛隊の力である。その能力をフルに活用しなければならない。一方で、国防の任務を万全にすることも忘れてはなるまい。白眼視していた自衛隊の強化にこそ、菅政権は取り組むべきである。

 同時に、長期戦も覚悟しなくてはならない。東日本大震災は、国内観測史上最大のマグニチュード(M)8・8を記録した。気象庁が宮城県沖などで想定していた海溝型地震はM7・5規模で、M8・8はその約90倍にあたる。

 気象庁は今後1カ月間に「M7以上の余震が何回か起きる可能性がある」と注意を喚起している。津波の恐怖も去っていない。

 12日未明、長野県北部で震度6強などの強い地震が相次いだ。気象庁は東日本大震災と「直接の関係はない」としつつ、「誘発でないとはいえない」と説明した。

超弩級(ちょうどきゅう)の震災だけに、東日本の広範な地域のどこで強い地震が誘発されても不思議はない。すべての国民が備えを万全に、冷静に行動する必要がある。

 被災地域は北海道から関東まで広範囲に及び、多くの現場は水没している。被害の全容把握は難渋を極め、復旧作業には長い時間を要する。被災者の生活支援も長期にわたると予想される。息の長い支援のために、組織だったボランティア活動や、地震の被害がなかった自治体で家を失った人々を受け入れることも必要となろう。

 注意したいのは、閣僚などによる現地視察だ。党首級の調査団が計画されているようだが、救援などの妨げとなってはなるまい。

 経済界も被災地支援に乗り出した。大手銀行や地方銀行は一部店舗で窓口業務を臨時に行い、本人と確認できれば通帳や届け出印がなくても一定金額の払い出しに応じる。コンビニなど流通各社は緊急テントや食品、飲料水、乾電池などの支援を行う。


日米同盟関係を深めよ


 米国、韓国など50カ国以上が支援を申し出た。中でもオバマ米大統領は「日本は最も強固で緊密な同盟国の一つ」と表明、菅首相に全面支援を伝えた。米韓合同演習に参加していた米原子力空母「ロナルド・レーガン」を含む艦船8隻を三陸沖に向かわせた。

 米軍にはヘリによる被災者救出や艦艇による自衛隊員の輸送など実質的な能力も期待されるが、より重要なことは、自衛隊と米軍が国内災害で本格的な共同活動を行う初の事例となることだ。緊密な協力を同盟強化につなげたい。