「カダフィ包囲網」に全神経を集中させる金正日総書記。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





【朝鮮半島ウオッチ】



 北朝鮮がリビア騒乱に全神経を集中させている。カダフィ大佐はキューバのカストロ議長とならぶ金正日総書記の反米の同志で、北朝鮮では親近感を持たれてきただけに、カダフィ追放への攻防は「絶対に流布されてはならないニュース」(米情報筋)なのだ。北朝鮮当局は情報遮断にやっきで、韓国の対北ビラ散布作戦には「わが軍が直接射撃する」との通告文も出した。その北朝鮮がいま最も恐れている事態とは-。

                                    (久保田るり子)




裏切り者を切り捨てられない事情


 

 金正日総書記(69)とカダフィ大佐(68)は同世代。2人は個人崇拝の絶対独裁体制、テロの強行、息子への世襲など政治手法に共通点が多い。だが、リビアは2003年に核放棄し米国の軍門に下ったいわば裏切り者のはずだ。しかし、北朝鮮はリビアの核放棄に関しての批判やカダフィ氏への非難を行ってこなかった。

 04年、リビアは核物質(六フッ化ウラン)を核計画放棄の一環で米国に引き渡したが、分析で北朝鮮で生成されたものだったことが判明。さらにパキスタンが核技術を北朝鮮に移転し、北朝鮮がこの技術で生成した物質をリビアに輸出していたという核技術トライアングルの証拠が米国や国際原子力機関(IAEA)に把握された。

なぜ、北朝鮮はリビアを非難しなかったのか。これは北朝鮮の国内事情のためとみられている。

 北朝鮮はリビアと1975年に国交を樹立。82年にはカダフィ大佐が訪朝して故金日成主席と同盟条約に署名した。70-80年代、北朝鮮はトリポリ空港建設などに多くの建設労働者をリビアに送った。その後はミサイル技術者なども派遣、その見返りで資金を得てきた。リビア滞在の経験者は北朝鮮で延べ1万人を超えるという。

 「リビアに行ってきた」は閉鎖国家、北朝鮮の人々の間では一生ものの勲章。当然、カダフィ大佐は英雄として親近感を持たれている。北朝鮮がリビアの核放棄を無視したのは、「カダフィの否定は金正日の否定につながる」との判断のためとみられている。

 中東地域で北朝鮮と核技術協力や武器輸出で関係が深いのはイランだ。ミサイル輸出ではシリア、イエメンで、リビアとの互恵関係は近年縮小している。


警戒は金日成総合大学の学生16000人


 現在、リビアにいる北朝鮮人は約200人。大使館員のほか、建設労働者、看護師らの出稼ぎがいる。彼らは本国との連絡も絶たれ、孤立しているもようだ。

 中東情報遮断のため往来を全面的に止めたが、朝鮮労働党組織指導部や宣伝扇動部のリビア情報への警戒ぶりは「ルーマニア革命(1989年)のチャウシェスク公開処刑に匹敵する」(米情報筋)という。

民衆蜂起で国軍に反旗を翻され、銃殺刑となったチャウシェスク夫妻の最期について、金総書記は平壌からブカレストに2人の要員を派遣して調べさせた。「独裁者の末路を詳細に調査して教訓を統制統治に生かすためだった」(北朝鮮専門家)

 当時、北朝鮮国内ではルーマニア革命情報をすべて遮断、これに成功した。だが、いまは時代が違う。

 朝鮮労働党が最も警戒しているのは、「党中央4000人の忠誠心と16000人の金日成総合大学の学生の動向」(米情報筋)だという。北朝鮮はエジプトやリビアと異なり、相互監視や秘密警察(国家安全保衛部)機能が非常にきついため、専門家の間では大衆的な反政府活動は依然、難しいとの見方が大勢だ。

 しかし、金日成総合大学を当局が最も警戒するのは、ここが北朝鮮版の太子党(高級幹部の子弟)の集団で、彼らの多くは特権で外部世界の情報をすでに知っていながら無視している確信的な若者層であるため。反政府の基地となれば、政治的影響が計り知れないからだ。




「最悪の事態」とは?


 

 リビアに止まりそうもない中東騒乱ドミノの北朝鮮への影響について軍事専門家は、金正日政権最大の懸念は中国への波及とみる。

 中国の民主化勢力や反政府運動に点火した場合、中国は内政に集中せざるを得ず不安定化する北朝鮮情勢への対応や支援が手薄になる恐れが強い。

核実験や韓国砲撃以来の国際的な経済制裁包囲網の中にある北朝鮮にとって中国からの物資と石油は命綱ともいえる。

 中東の混乱が続き中国の国内が流動化した場合、中国の軍、公安(警察)など権力組織は中東からの石油輸入減少を恐れ北朝鮮への支援を止める可能性も出てくる。「北朝鮮は石油禁輸を最も恐れているようだ」(軍事専門家) 

 長期化の様相もみせているリビア騒乱だが、その行方は北東アジアの深層を揺るがすかもしれない。





草莽崛起

        平壌の野菜科学研究所を現地指導する金正日総書記。日時は不明(ロイター)











草莽崛起


           http://sankei.jp.msn.com/world/news/110306/kor11030607000000-n1.htm