否定できぬアラブ民主化。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

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【あめりかノート】古森義久




中東のいまの激変はやはり民主化への動きと呼ぶのがふさわしいのだろう。エジプトでもリビアでも、独裁政権に対し国民の多数が民主主義や個人の自由を求めて退陣を迫るという基本は明確だからだ。自由民主主義へのうねりだともいえよう。

 だが米国でも日本でも「アラブには民主主義は向かない」とか「イスラムの部族社会には民主主義は適さない」という主張がかなり頻繁に述べられてきた。中東のいまの現実はこの主張を打ち砕いたのだろうか。

 「歴史の終わり」という論文の著者として世界的に知られた米国の政治学者、フランシス・フクヤマ氏に聞いてみた。ソ連共産主義体制の崩壊が明白となってきた1989年、「人類のイデオロギーの発展は自由民主主義への到達で終わる」という大胆な結論で共産主義や全体主義の終幕と民主主義の普遍的な広がりを明言した人物である。

 「アラブの人たちは文化的な理由で個人の自由には消極的で、民主主義は適さず、全世界的な民主化の潮流の例外なのだという議論は確かに長年、ありました。だがいまはテレビの映像をみるだけで、もうそれが事実ではないことがわかります。中東の人たちも他の地域の人々と同様に自由への希求を強く抱いていることが証明されたのです」

 フクヤマ氏は現在、スタンフォード大学の国際問題研究所の特別研究員として教壇にも立つ。今回の中東の激変は1970年代からベルリンの壁の崩壊を経て世界の主要地域で起きた民主主義の高まりがついに例外として残されていた中東にまで及んだ現象として歓迎するという。

 「ブッシュ前大統領の2期目の就任演説やライス前国務長官のカイロ演説はアラブの人々も自由を望むと強調しました。イスラムの文化や宗教が中東を民主主義には不適にしているという見解をはっきり排除したのです。その態度は正しかった。ただしムバラク政権などが民主主義をあまり進めると、イスラム過激派が進出してくると警告し、米国もそれに影響されたことは間違いでした」

 フクヤマ氏はブッシュ前大統領が民主主義の普遍性を説きながらも中東ではイラク以外、それをそう強く推進しなかったのは、ひとつには2006年のパレスチナの民主的な選挙で実際にテロにも関与したイスラム原理主義組織ハマスが勝利を飾ったことによる、と述べた。確かに民主主義には民主主義自体を否定する勢力さえも政治や統治への参加を許すという固有の弱点がある。

 エジプトでもムバラク政権の崩壊後、組織化された政治勢力としては最大のムスリム同胞団もイスラム原理主義である。民主主義とは異なる統治を目指すことも否定できず、ムバラク政権の警告がまったくの的外れではないことを示唆している。

 だがそれでもアラブ世界の人たちが民主化を求め、実際に民主的な統治を機能させられることはイラクの実例が示したといえよう。中東各国の激動のなかで、すでに民主化されたイラクだけは政権自体を否定する動きに襲われていない。ただし米国内ではブッシュ政権のイラクへの軍事介入に反対した側はイラクの民主化の実績を認めたがらないようだ。

 しかし中東の現状をみて、イラク国民の大多数をはじめとする各国の人々が民主化や自由を切実に求めていることを否定するのは、もはやどうにも難しいだろう。


                           (ワシントン駐在編集特別委員)