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【正論】中国現代史研究家・鳥居民
◆今日の中東は明日の中国?
チュニジア、エジプトを支配していた長期独裁政権がたちまちのうちに倒れ、リビアの独裁者の命運も尽きようとしている。人々の関心は隣国、中国の独裁政権の明日は、ということになる。
昨年のことであったが、2つの数字を見て、驚いた記憶がある。香港と日本の雑誌に載った警察官の増員に絡むものだ。ひとつは、中国国務院が発表した、地方からの警察官増員要求の数字だ。各省などがそれぞれ8万人から10万人を増やしたいと要望して、その総計は120万人に上った。
もうひとつは、日本の来年度予算で要求されている警察官増員の数字だ。823人である。
これを読んで、中国の地方の警察官はよっぽど少ないのだと早合点する人がいるかもしれない。もちろん、違う。中国の公安部所属の「人民警察」と軍直轄の「人民武装警察隊」、さらに、他の部門の治安維持の要員を合わせた数字は機密のひとつなのだが、1000万人を超すとされてきた。ところが、米誌ニューズウィークは、中国治安要員の総数について「300万の兵を抱える世界最大の中国軍を小人扱いにするものだ」とし2100万人と記した。
びっくりして、国連関係機関が発表する最新の統計表を繰り、人口10万人当たりの警察官の数を調べてみた。日本も他の国々もさほど違わず、200人前後。そして世界1位はイタリアだ。意外だと思う人も、マフィアの国だ、当たり前だという人もいるだろう。550人である。次がメキシコで、500人に近い。麻薬戦争が続いて毎日、10人、20人が殺されている国である。当然だろう。
◆百人に1人半の警官でも不足
中国は、警察官の数を公表していないのだから、国連統計に数字は出てこない。「2100万人」を基にすれば、人口10万人当たり1500人を超す。秘密警察や警察補助部隊の人員数も不明なのだが、それらを削ることにして、人口10万人当たり1400人だとしてもいい、1000人にしてしまっても構わない。それでもなお、イタリアの倍となる。ところが、まだ足りない、もう120万人増やしたいというのである。一体、どういうことなのだろう。
中国共産党指導部の基本政策にはこの20年の間、変わりがない。「穏定(安定)が一切を圧倒する」であり、「穏定を維持すること」が全てに優先されてきたのである。そのための経費を惜しんではならないし、予算をオーバーしても構わないというのが、党中央の基本方針となってきた。
かくして、治安維持のための新しい機関がいくつもつくられて、治安要員は増え続け、治安維持の経費も激増を続けてきた。
◆治安維持費過去16年で40倍に
1993年に中央と地方の治安経費の総計は165億元だった。それから7年後の2000年には10倍になり、1711億元となった。そして09年にはさらにその4倍の6682億元。16年間で40倍に膨れあがったのである。
誰もが思い浮かべるのは、この20年の間の中国軍事費の絶え間ない増大であろう。実際、中国の治安維持費は軍事費と競い続けてきた。そして、昨年になって、ついに、治安維持費が軍事費を追い抜いた。もっとも、これには注釈が必要だろう。正確には、公表されている軍事費よりも治安維持費の方が多くなった、というべきであって、実際の軍事費は公表額の2倍以上なのだから、治安維持費がどれだけ大躍進を続けても、軍事費には到底、かなわない。
中国共産党指導部は「穏定が一切を圧倒する」を合言葉に、治安要員と治安維持費を増やし続けてきた。そしてこの20年、「穏定の維持」は成ってきた。それは、人権活動家や反体制活動家を直ちに投獄してしまい、党と法へ怒りの声を上げる市民との繋(つな)がりを封じる手荒な手法によった。一カ所で起きたデモと混乱の「群衆事件」が他の村や街の「群衆事件」と結びつき、危険が広がる事態とならないように始末もつけてきた。新疆ウイグル、チベットの両自治区での暴動、騒乱の拡大を阻止して、抑え込むことにも成功した。
だが、過去20年に及ぶ「穏定の維持」の秘訣(ひけつ)のひとつは、同じ20年の間に、外国資本と技術の導入を続け、広大な農村部から出てきた若い労働者を安い賃金で使い、人民元を安くとどめて、輸出産業の補助金としたことにもあった。そして、同じ20年の間に、世界経済が成長を続け、なかんずく、米国市場が過大な消費を続け、無尽蔵に中国からの輸出品を呑(の)み込んだことにあったのである。
だが、全てが変わり、変わろうとしている。治安要員を増やし、治安維持費の増大を認めさえすれば、これからも安泰だと中国共産党の最高幹部が過信しているとは思えない。社会保障制度の整備など後回しでよい、軍事費を増やし続けて構わない、治安維持費さえ増やしていけばよいといったお気楽な時代は、チュニジア、エジプト、リビアの事態が起きる前にとうに終わりを告げている。(とりい たみ)